東京地裁(令和元年6)“抗ウイルス性衛生マスク事件被告らは、平成7年9月頃には(a)抗ウイルス剤を施したニット布地と、抗ウイルス剤を施さないニット布地との2層の布地から成り(b)鼻部、下顎部、左右の両耳介部の付け根の外側を覆う形態で、表側に前記抗ウイルス剤を施したニット布地を、前記鼻部及び前記下顎部と接する内側には前記抗ウイルス剤を施さないニット布地を重ねてマスク本体を形成し(c)該マスク本体には、鼻頂部、左耳介部の外側、下顎部、右耳介部の外側を結ぶ周縁に沿ってニット布地で一定厚みの縁取を形づくる枠体を形成し(d)中央部には、前記鼻部の鼻下及び唇部を覆って空間を形づくる可及的に伸縮性をもたない非伸縮性の接合部を形成した(e)抗ウイルス性衛生マスクである本件サンプル品を作製したと主張し、その証拠として、マスクの写真・・・・及び仕様書・・・・を提出する。しかしながら、上記各証拠によっても、本件サンプル品について、少なくとも、抗ウイルス剤を施したニット布地と、抗ウイルス剤を施さないニット布地との2層の布地から成ること(構(a)や、表側に前記抗ウイルス剤を施したニット布地を、鼻部及び前記下顎部と接する内側には前記抗ウイルス剤を施さないニット布地を重ねてマスク本体を形成していること(構(bの一部)を認めることはできず、他にこれらを認めるに足りる証拠はない。そうすると、本件サンプル品は被告製品と同一の発明の範囲内のものであるとは認められないから、その余の先使用権の成立要件を判断するまでもなく、被告が本件特許権に対して先使用権を有するとは認められない」と述べている。

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