大阪地裁(令和元年7)“惣菜事件原告は、平成7年1月の新年会で交付を受けた0万円につき、特許等を受ける権利の譲渡の対価の趣旨で交付されたものであると主張し、これに沿う供述をする」、「上記0万円につき特許等を受ける権利の譲渡の対価と見るに当たり、その価額の算定根拠は明らかでないし、対価として相当な価額であることをうかがわせる事情もない。むしろ、上記新年会は、商品開発に従事する者に限らず被告の岡山工場の従業員全員が参加し得るものであり、かつ酒席であることを併せ考慮すると、就業規則等に職務発明等に係る規定のない被告が、そのような場で、特許等を受ける権利の譲渡の対価を支払うとは考え難い。これらの事情に鑑みると、上記0万円の支払は、顕著な業績を残した商品の開発に従事したことへの報奨として、他の従業員の士気を高める目的も含めた一般的な表彰に伴うものと理解するのが合理的である。これに沿う被告代表者の供述には信用性があるといってよい。したがって、この点に関する原告の供述は信用し難く、原告の主張は採用できない」、「原告は、本件話合い(サイト注:原告の定年退職後の再雇用についての話合い)の際、被告代表者が『商品を発明してくれればそれに見合った報酬を出すから頑張ってほしい』などと発言したと主張する」、「その供述に係る被告代表者の発言は、必然的に職務発明等と結び付けて理解し得るものではないし『商品が売れれば、また表彰する』旨の発言をしたとする被告の主張及び被告代表者の供述と趣旨を異にするものでもない。しかも、そのような理解は、平成7年1月の新年会の際に、開発に従事した商品の顕著な業績を理由に原告に報奨金0万円が交付されたという経緯・・・・にも合致する。そうすると、本件話合いにおける発言の具体的な文言はさておき、その際、原告及び被告代表者、少なくとも被告代表者が、再雇用後の原告による商品開発が職務発明等となる場合のことを念頭に置いていたと見るに足る事情はなく、趣旨としては、開発に従事した商品の売行きが良好であればまた表彰することもあり得る旨を発言したものと理解するのが合理的である。したがって、この点に関する原告の主張は採用できない」、「上記・・・・認定に係る事実のほか、被告が、本件商品等1〜3(サイト注:ホルモンうどん、豚ロース・ロールかつ、塩麹タレ)につき、特許出願や実用新案登録出願をしていないこと・・・・、被告は、原告が開発に従事した本件商品等1〜3を現に商品化して販売しているけれども、惣菜の製造販売をその目的の1つとする被告が、商品開発の成果である商品を製造販売することは当然であり、これをもって特許等を受ける権利の譲渡を受けたことを前提とする行動であるとはいえないことを考慮すると、・・・・原告と被告との間で、原告の特許等を受ける権利の譲渡の対価を被告が支払う旨の黙示の合意が成立したと見ることはできない」、「そうである以上、本件商品等1〜3に係る発明又は考案について、原告から被告に特許等を受ける権利が譲渡されたとは認められない。したがって、原告は、被告に対し、その相当な対価の支払請求権を有するとはいえない」と述べている。

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