知財高裁(令和元年7月30日)“美容器事件”は、「本件特許発明は、・・・・棒状のハンドル本体に表面から内方に窪んだ凹部を形成し、該凹部をハンドルカバーによって覆うことで、ハンドルを上下又は左右に分割した場合に比べて、ハンドルの成形精度や強度を高く維持することができるとともに、ハンドルの内部を容易に密閉できるようにして組立て作業性を向上したものであるところ、このような課題は、甲1にも甲11〜14にも記載されておらず、技術常識であったとも認められない。また、甲11〜14に現れる技術事項について、甲13は美顔器の意匠公報であるため、内部の構造の詳細は明らかではない。甲11、12及び14には、いずれも表面から内方に窪んだ電池装着部を有し、その電池装着部をカバーで覆い、表面及びその蓋により把持部の表面を構成することが記載されており、これらによると、『ハンドル本体の内部に部材を有する器具において、ハンドル本体の表面から内方に窪んだ凹部を設けて、ハンドル本体との結合部分が露出しない状態で上記凹部を覆うように上記ハンドル本体に取り付けられたカバーを設けること』という技術事項を把握することができるが、甲11はトリートメント装置(ヘアブラシ)、甲12はヘアブラシ、甲14は電子イオン歯ブラシに関するものであるため、甲1発明の美容器とは技術分野が異なる。そして、甲11、12及び14から把握できる技術事項に従って、ハンドルの内部に凹部を設けて、当該凹部を覆うようにカバーを設けることは、甲1発明の芯材13と外装カバー14、15からなるハンドルから、芯材13を取り除き、外装カバー14又は外装カバー15に開口を設けた上で、当該開口を覆うようにハンドルカバーを設けることとなるが、・・・・甲1発明において芯材13を備えることは、芯材としての機能及び絶縁材としての機能のために、これを取り除くことは容易とはいえない。したがって、甲1発明に甲11、12及び14の技術事項を採用する動機付けを認めることはできない。よって、相違点1について容易想到性を認めることはできないから、相違点2及び3について判断するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲11〜14に基づいて容易に発明することができたとは認められない」と述べている。 |