知財高裁(令和元年9月11日)“ゲームシステム作動方法事件”は、「本件公知発明1は、キャラクタでプレイするゲームにおいて、セーブされたキャラクタを前作のゲームから後作のゲームに転送するものであり、前作のゲームにおいて、プレイ途中でセーブして、なおかつ、キャラクタのレベルが16以上である場合に、後作のゲームにおいて、ゲームのプレイが有利になるという特典が与えられるものである。そうすると、本件公知発明1は、少なくとも、前作において、ゲームをプレイ途中でセーブするとともに、ゲームをある程度達成した、すなわち、前作のゲームにおいて、キャラクタのレベルが16以上となるまでプレイしたという実績があることが、後作においてプレイを有利にするための必須の条件であり、『キャラクタ』、『プレイ実績』を示す情報を前作の記憶媒体にセーブできることが本件公知発明1の前提であって、『キャラクタ』、『プレイ実績』の情報をセーブできない記憶媒体を採用すると、前作のゲームにおける『キャラクタ』、『プレイ実績』の情報が記憶媒体に記憶されないこととなり、『前作のゲームのキャラクタで、後作のゲームをプレイする』、『前作のキャラクタのレベルが16以上であると、後作において拡張ゲームプログラムを動作させる』という本件公知発明1を実現することができなくなることは明らかである。したがって、仮に、被控訴人の主張するとおり、ゲームプログラム及び/又はデータを記憶する媒体としてCD−ROMを用いることが本件特許Aの出願前において周知技術であり、また、同一タイトルのゲームをCD−ROMやROMカセットに移植することが一般的に行われている事項であったとしても、本件公知発明1において、記憶媒体を、ゲームのキャラクタやプレイ実績をセーブできない『記憶媒体(ただし、セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)』に変更する動機付けはなく、そのような記憶媒体を採用することには、阻害要因がある。以上のとおりであるから、本件公知発明1において、相違点1−1に係る本件発明A1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとは認められない」、「同様の理由により、本件公知発明1において、相違点1−2に係る本件発明A1の構成を採用することは、動機付けを欠き、むしろ阻害要因があるというべきであるから、当業者が容易に想到し得たものであるとは認められない」、「これに対し被控訴人は、相違点1−1及び1−2は、本件訂正Aにより、『第1の記憶媒体』及び『第2の記憶媒体』から「セーブデータを記憶可能な記憶媒体』が除かれ、その結果、『所定のキー』からセーブデータが除かれたこと(『除くクレーム』とされたこと)により生じたものであることを前提として、除くクレームとする訂正により、形式的に主引用発明との間に相違点が存在すると認められる場合は、@相違点に係る構成によって、技術的観点から主引用発明と異なる作用効果が存在するか否かを検討し、A技術的意義が認められない場合には、実質的な相違点とはいえず新規性が否定されると解すべきであり、B技術的意義が認められた場合には、当業者において適宜なし得る設計事項に過ぎないか否かを検討し、設計事項に過ぎない場合には、進歩性が否定されると解すべきであるところ、本件訂正Aは、シリーズ化された一連のゲームソフトを買い揃えていくことにより、豊富な内容のゲームを楽しむことができるようにするという本件発明A1の課題との関係では、技術的な解決手段を示したものとはいえず、技術的意義がないものであって、本件発明A1の作用効果や技術的思想は、本件訂正Aの前後で変わらないから、相違点1−1及び1−2は、実質的に相違点とはいえず、少なくとも、当業者が適宜なし得る設計事項である旨主張する。しかしながら、前記・・・・のとおり、本件公知発明1において、相違点1−1及び1−2に係る本件発明A1の構成を採用することは、動機付けを欠き、むしろ阻害要因があるというべきものである。また、本件発明A1において、『第1の記憶媒体』及び『第2の記憶媒体』を『セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く』ものとすることは、前作のプレイ実績にかかわらず、後作において拡張ゲームプログラム及び/又はデータによってゲームを楽しむことができるという作用効果を奏するものであって、技術的意義を有するものであることからすると、相違点1−1及び1−2は、実質的な相違点であるといえるし、当業者が適宜なし得る設計事項であるとは認められない。したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない」と述べている。 |