知財高裁(令和元年9月18日)“手袋に対するテクスチャード加工表面被覆事件”は、「本件各発明のような物を生産する方法の発明についての実施とは、その方法を使用する行為及びその方法により生産した物を使用等する行為をいう(同法2条3項3号)から、物を生産する方法について・・・・実施可能要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載内容及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、かつ、その方法により生産した物を使用できる程度の記載があることを要し、また、その程度の記載のあることをもって足りるものと解される」、「本件各発明の方法に用いられる『型』・・・・、『凝固剤』・・・・、『水性ラテックスエマルジョン』ないし『発泡体』に相当するもの・・・・、『塩』ないし『離散粒子』に相当するもの・・・・、『織布』ないし『メリヤス』・・・・については、いずれも本件明細書に具体的にその意義(使用目的)、材料名、調合方法又は入手方法等が記載されている。また、本件各発明の方法に係る具体的手法は、離散した塩粒子のサイズ及び塗布方法・・・・や、塩の粒子の溶解がラテックスの第二層の熱硬化の前に行われること・・・・を含めて、いずれも本件明細書に実施例を交えて詳細に記載されている・・・・。よって、本件明細書の発明の詳細な説明には、これに接した当業者が、本件各発明の方法の使用を可能とする具体的な記載がある」、「また、本件各発明により生産されるのは、テクスチャード加工表面被覆を有する手袋であるところ、本件明細書の発明の詳細な説明には、テクスチャード加工表面被覆は、離散粒子(塩)の逆像が多面的な痕となって残ったものであり、手袋の外側又は内側のいずれかに取り入れられることが記載されている」、「このように、本件明細書には、その具体的な実施の形態の記載もあることからすれば、当業者において、発明の詳細な説明の記載内容及び出願時の技術常識に基づき、その製造方法を使用し、かつ、その製造方法により生産した手袋を使用することができる程度の記載があるということができ、使用のために当業者に試行錯誤を要するものともいえない。よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合するものと認められる」と述べている。 |