東京地裁(令和元年9月4日)“情報管理プログラム事件”は、「被告は、被告サービスに対する本件発明の寄与率は0%と解すべきであるとして、特許法102条2項における推定覆滅事由があり、その割合は100%であると主張する」、「被告は、被告プログラムの訴求ポイントは、Phone Cookieという独自技術を用い、ウェブと電話から得られるトランザクション情報を効果的に利用する点であるのに対し、本件発明の特徴点は、補正手続において付加された構成要件Eであるから、被告プログラムと本件発明は訴求ポイントが異なると主張する。しかし、本件発明は、その構成要件が一体となって所期の効果、すなわち、『架電先を識別するための識別情報を広告情報ごとに動的に割り当てて、識別情報の再利用を可能とすることにより、識別情報の資源の有効活用及び枯渇防止を図る』・・・・とともに、『ウェブページへの提供期間や提供回数に応じて動的に識別情報を変化させることにより、広告効果を時期や時間帯に基づき把握すること』・・・・を可能にするものであり、構成要件Eが出願審査の過程において補正により付加されたとしても、同構成要件のみが本件発明の特徴点であると解することはできない。他方、被告プログラムを使用している本件不動産サイト・・・・においては、ユーザーによる架電の負担の軽減が課題として掲げられるとともに、『その時・その人にだけ有効な『即時電話番号』を発行』し、『静的に電話番号を割り振るのではなく、ユーザーのアクションに応じて動的に電話番号を割り振』るとの内容を有することが記載されていることが認められる。上記本件不動産サイトに記載された『その時・その人にだけ有効な『即時電話番号』を発行』し、『動的に電話番号を割り振』ることは、『識別情報の資源の有効活用及び枯渇防止を図る』などの本件発明の効果を発揮する上で不可欠な要素であり、被告プログラムにおいてもこうした構成を備えた結果、その顧客は本件発明と同様の効果を享受しているものということができる。被告は、被告サービスの訴求ポイントについて、Phone Cookieという独自技術を用い、ウェブと電話から得られるトランザクション情報を効果的に利用することができる点にあると主張するが、同技術が被告サービスの売上に貢献したことを具体的に示す証拠はない。そうすると、被告プログラムがPhone Cookieという独自技術を用いているとしても、この点を覆滅事由として考慮することはできないというべきであり、被告がそのために被告を特許権者とする特許技術・・・・を使用していることも、上記結論を左右しない」、「本件においては、被告が得た利益の全部又は一部について推定を覆滅する事由があるということはできない」と述べている。 |