大阪地裁(令和2年1月23日)“通信端末装置事件”は、「乙12−1発明は、発明の名称を『無線携帯端末』とする発明であり、平成11年3月1日に出願され、平成12年9月14日に出願公開されたものであるから、本件発明1(同年4月24日出願)が乙12−1発明と同一であれば、本件発明1は、特許法29条の2により、特許を受けることができなかったことになる」、「本件発明1と乙12−1発明との間には、@本件発明においては、画像をメモリ番号に対応付けているが、乙12発明においては、画像を電話番号に対応付けている点(相違点@)、A本件発明1においては、新たに入手・記憶された第2画像が優先的に表示されるが、乙12発明においては、新たに入手・記憶された画像が優先的に表示されるか否か不明である点(相違点A)、という相違点が存するとも考えられるため、これらの相違点が設計上の微差にすぎないか、実質的な相違点であるかについて、以下検討する」、「本件特許1の出願当時、携帯電話やハンドフリー電話の分野においては、携帯電話等の端末において、特定の電話番号をメモリ番号に対応付けて記憶させることは、複数の名前や電話番号を含む情報を整理するなどの目的に広く使われる、周知の技術であったことが認められる・・・・。そうすると、画像を、ある電話番号と対応付けられたメモリ番号に対応付けて記憶させるか、それとも、直接、当該電話番号と対応付けて記憶させるかという違いは、設計上の微差にすぎないというべきである」、「乙12−1発明において、ある特定の電話番号に対して既に1つ又は複数の画像が対応付けられて記憶されている場合において、新たな画像をカメラやネットワークを通じて入手し、当該電話番号に対応付けて記憶させたとして、当該電話番号から着呼があった際、当然に、その新たな画像が優先的に着信画面に表示されるようになるということはできない。しかし、・・・・乙12−1発明は、複数の画像を1つの電話番号に対応付ける機能部を有しており、これを使用して、当該電話番号の着呼に応じて、複数の画像から1つの画像を選択しており、かかる選択を、着呼毎に変更したり、時間に応じて変更したり、一回の着呼に対して複数の画像を順番に変更したりすることにより、様々な表示を行っているものと認められる。したがって、乙12−1発明において、電話番号と対応する複数の画像からどの画像を選択するかということは任意に設定することが可能であり、複数の画像のうち、新たに入手した画像を優先的に選択することや、上記機能部において、これまで記憶されていた複数の画像のうち、表示しない画像と当該電話番号との対応付けを削除するか否かということは、必要に応じて、当業者が適宜選択し得る設計的事項である。また、かかる選択をしたことに伴う顕著な効果も認められない。よって、乙12−1発明において、複数の画像のうち、新たに入手した画像を選択して表示し、これまで記憶されていた複数の画像と当該電話番号との対応付けを削除せずに、これまで記憶されていた複数の画像と当該電話番号との対応関係を維持することは、当業者が適宜選択し得る設計的事項であるといえ、奏せられる効果に著しい差も認められない。したがって、相違点Aについても、設計上の微差にすぎないということができる」、「以上より、本件発明1は、実質的に、乙12−1発明と同一であるから、特許法29条の2により特許を受けることができないものであって、同法123条1項2号の無効理由があり、特許無効審判により無効とされるべきものと認められる」と述べている。 |