知財高裁(令和2年1月28日)“椅子型マッサージ機事件”は、「本件明細書には、本件発明に係る椅子型マッサージ機の具体的な実施の形態の記載があることからすれば、その使用をすることができる程度の記載があるということができ、また出願時の技術常識も踏まえれば、その製造に当業者が過度の試行錯誤を要するとも認められない。よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合する」、「原告は、・・・・構成要件Hは空気式マッサージ具による挟み動作と施療子による叩き動作という異質の2種類の施療手段をあえて同期させるものであるから、その制御手段を具体的に開示することが要請されるところ、本件明細書の発明の詳細な説明には制御手段の具体的な説明はなく、またかかる制御手段が技術常識であった事実は存在しないから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に違反していると主張する。しかし、本件明細書の発明の詳細な説明には、・・・・機械式マッサージ器8の左右の施療子9がマッサージ用モータ10の回転を制御することで叩き動作を行うことや、空気式のマッサージ具41が内部に備えた袋体(エアセル42)にコンプレッサー61から空気を供給し膨張させることで押圧動作を行うことが記載されている。そして、機械式のマッサージ器による叩き動作と、空気式マッサージ器による押圧動作を『同時』に行うためには、両者の制御をその字義どおり時を同じくして・・・・行えば足り、それぞれを単独で動作させる場合の制御と格別異なる制御を要するものではないから、このような制御手段について発明の詳細な説明に記載がないとしても、そのことによって当業者が本件各発明の実施に過度の試行錯誤を要するとは認められない」と述べている。 |