知財高裁(令和2年11月30日)“チューブ状ひも本体を備えたひも事件”は、「『原料仕入高』・・・・、『租税公課(関税)』・・・・、『委託製造仕入高(スリーランナー、モリト)』・・・・、『包装費(スリーランナー、モリト、TLC製専用)』・・・・、『包装費(パッケージ゙、台紙、JANシール)』・・・・、『包装外注工賃(国産製専用)』・・・・及び『包装外注工賃』・・・・は、いずれも、被告各商品を製造販売するために追加して必要となった費用であると認められるから、・・・・限界利益を算定する過程で差し引くべき経費として認めるのが相当である」、「個別固定費としての『賃金(製造担当者のみ)』・・・・、『法定福利費』・・・・、『工場消耗品費』・・・・、『製紐機修繕費』・・・・及び『旅費交通費』・・・・は、いずれも被告各商品を製造するために追加して必要となった費用であると認められるから、・・・・限界利益を算定する過程で差し引くべき経費として認めるのが相当である。控訴人は、『賃金(製造担当者のみ)』、『法定福利費』及び『旅費交通費』について、当該従業員は被告各商品の製造を担当しないのであれば、他の商品の製造等を担当するだけであるから、これらの費目は、被控訴人の侵害行為に関係なく必要となる費用であると主張する。しかし、被控訴人の従業員が他の商品の製造、販売を行うとしても、それぞれの時期において商品の製造数に応じて、雇用する従業員の数や勤務時間は変動すると考えられる上、・・・・これらの経費は、被告各商品の製造に関するものとして算定されたものであるから、これらは、侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費と認めるのが相当である。また、控訴人は、被控訴人の侵害行為に関係なく、被告各商品以外の商品の製造のために工場の賃借や製紐機の導入等が行われたといえるから、これらの費用は、侵害品の『製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費』とはいえないと主張するが、工場の賃借や製紐機の導入等とは異なり、『工場消耗品費』及び『製紐機修繕費』は、被告各商品を製造することにより増加する経費であると考えられるし、・・・・これらの経費は、被告各商品の製造に関するものとして算定されたものであるから、これらも、侵害品の『製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費』と認めるのが相当である」、「他方、・・・・『地代家賃』については、被控訴人は、TLCの製造ラインで、被告各商品だけでなく、被告各商品以外の結ばない靴ひもを製造したり、試作品を製造するなどしていることが認められるから、TLCに製造ラインを設置し、その製造ラインのために工場を賃借する費用が、被告各商品を製造販売するために追加して必要となった費用であると認めることはできない。したがって、これを限界利益を算定する過程で差し引くべき経費と認めることはできない」、「『外注加工費』・・・・及び『水道光熱費等』・・・・は、いずれも被告各商品を製造するために追加して必要となった費用であると認められるから、・・・・限界利益を算定する過程で差し引くべき経費として認めるのが相当である」、「もっとも、『製紐機の減価償却費』・・・・については、前記・・・・の『地代家賃』と同様に、製紐機を使用して、被告各商品だけでなく被告各商品以外の商品も製造していることからすると、被告各商品を製造するために追加して必要となった費用であると認めることはできないから、これを限界利益を算定する過程で差し引くべき経費と認めることはできない」、「『運賃(材料輸入時)』・・・・及び『荷造り運賃(福山通運)』・・・・は、いずれも被告各商品を製造販売するために追加して必要となった費用であると認められるから、・・・・限界利益を算定する過程で差し引くべき経費として認めるのが相当である。控訴人は、製造原価で按分する前の費用には、被告各商品以外の運賃も含まれているから、侵害品の『製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費』ということはできないと主張するが、製造原価で按分した後の運賃は、侵害品の『製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費』ということができることは明らかである」、「被控訴人は、同一建物内に工場部分と倉庫部分を設けており、倉庫部分には、TLCにおいて製造したキャタピランや、中国から輸入したキャタピラン、その他の商品などを保管していることが認められる。前記・・・・のとおり、被控訴人は、TLCの製造ラインで、被告各商品だけでなく、被告各商品以外の結ばない靴ひもを製造したり、試作品を製造するなどしていることが認められる上、倉庫部分が工場部分と同一建物内に設けられていることからすると、被控訴人が当該建物を倉庫部分として賃借して使用することは、被告各商品を保管するかどうかにかかわらず、被控訴人にとって必要な経費であると認められる。したがって、在庫保管のための『地代家賃』が被告各商品を製造販売するために追加して必要となった費用であると認めることはできず、これを限界利益を算定する過程で差し引くべき経費と認めることはできない」、「もっとも、・・・・在庫保管経費としての『水道光熱費』は、被告各商品を製造販売することによって、追加して必要となった費用であると認められるから、・・・・限界利益を算定する過程で差し引くべき経費として認めるのが相当である」、「『支払手数料(販売口銭)』・・・・、『業務委託費』・・・・及び『広告宣伝費』・・・・は、いずれも被告各商品を製造販売するために追加して必要となった費用であると認められるから、・・・・限界利益を算定する過程で差し引くべき経費として認めるのが相当である。控訴人は、被控訴人の主張に基づく売上げの減少からすると、『広告宣伝費』は功を奏していないから限界利益を算定する過程で差し引くべき経費に当たらないと主張するが、被控訴人が広告宣伝を行わなかったときには実際の被告各商品の売上げが確保できなかった可能性があるから、被控訴人が行った広告宣伝が功を奏していないと直ちにいうことはできない。したがって、広告宣伝費が限界利益を算定する過程で差し引くべき経費ではないということはできない」と述べている。 |