知財高裁(令和2年11月30日)“チューブ状ひも本体を備えたひも事件”は、「被控訴人は、被告各商品の販売は被控訴人の顕著な営業努力によるものであると主張する。証拠・・・・及び弁論の全趣旨によると、@キャタピランは、平成25年2月頃から、新聞、雑誌やその他マスメディアにおいて、当初はひもを結ばない靴ひもという画期的な商品であるとして、後には、これに加えてヒット商品であるなどとして取り上げられており、平成26年2月2日の『がっちりマンデー』・・・・、同年3月の『シューイチ』・・・・、平成27年1月の『ヒルナンデス』・・・・、同年2月の『Nスタ』・・・・、同月の『ZIP』・・・・、同年11月の『おはよう日本』・・・・や『ウラマヨ』・・・・などの情報番組で取り上げられ、反響を得たこと、A被控訴人代表者は、被告各商品の販売のため、Iの著書において被控訴人代表者やキャタピランの開発に至る経緯を紹介してもらったり、その他の著名人に紹介してもらい、このような著名人と被控訴人代表者との交流をSNSを通じて発信するなどし、また、千葉県知事や船橋市長とも知り合いとなり、被告各商品の認知を得たこと・・・・、B被控訴人は、サッカーチームである『SC相模原』、プロ野球の『北海道日本ハムファイターズ』、プロバスケットボールチーム『千葉ジェッツ』、ラグビーチーム『クボタスピアーズ』などとそれぞれスポンサー契約を締結し、競技場でのイベント、コラボグッズの販売や協賛品の配布などによってキャタピランを宣伝していること・・・・、C被控訴人は、東京マラソンEXPOや名古屋マラソンEXPOなどのスポーツイベントにキャタピランを出品したり、協賛品としてキャタピランを配布したり、ランニングイベントに協賛するなどしたこと・・・・、D被控訴人は、元プロ野球選手のL、プロゴルファーのM・・・・、マラソン界のN・・・・、女子マラソン選手のOなどにキャタピランアンバサダーに就任してもらい、同人らにキャタピランの広告活動を行ってもらっていること・・・・、E被控訴人は、平成26年に『キャタピランランニングクラブ(CRC)』を発足させ、ランニングイベントを定期的に実施し、市民ランナーにキャタピランの宣伝をしていること・・・・、F被控訴人は、ユーザーから回収したアンケート結果をマーケティング戦略や商品の改良に利用したり、福岡大学及び筑波大学との共同研究を通じてキャタピランの商品価値を検討し、これに基づいたマーケティング戦略を行っていること・・・・、G『結ばない靴ひも』の『キャタピーくん』というキャラクターを作り、これを宣伝活動に利用していること・・・・、H宣伝広告費として平成24年10月から平成25年3月までに約212万円、同年4月から平成26年3月までに約2000万円、同年4月から平成27年3月までに約3200万円、同年4月から平成28年3月までに約2475万円をそれぞれ支出したこと・・・・、H被告各商品の取引先として、エービーシー・マート、イトーヨーカドー、東急ハンズ、ヨドバシカメラ、ビックカメラなどの取引先を獲得することができるようになったこと・・・・などが認められる。しかし、これらのうち、被控訴人が中国産キャタピランを販売していた頃の営業活動は、本件4者の共同事業に基づくものであるともいえるから、これをもって被控訴人のみの固有の営業活動であると評価するのは相当でない。また、被控訴人の上記の宣伝活動は、広範囲にわたって行われているものの、スポーツ用品として用いることができる被告各商品の営業活動としては、通常考えられるものであって、特に顕著なものであるとは認められない。被控訴人は、控訴人及び訴外会社が十分な営業活動をすることができなかった旨も主張するが、被控訴人の営業活動が特に顕著なものとは認められない以上、被控訴人が被告各商品の製造販売により得た利益を控訴人に得させるのが不当であるとはいえない。したがって、被控訴人の営業活動を覆滅事由として認めることはできない」、「被控訴人は、市場における被告各商品の競合品の存在を主張し、証拠・・・・及び弁論の全趣旨によると、『結ばなくても良い』靴ひもであること、スポーツなどに最適な足へのフィット感を訴求したものであることなどをうたった商品が、被告各商品以外に存在しており、これらの商品は、被告各商品と比較されることや同じ場所で販売されることがあったことが認められる」、「本件発明1は、伸縮性素材によって作られたくつ紐にこぶを作ることにより、結ぶ必要がないことを特徴とするもの・・・・であり、被告各商品もこの特徴を有すると認められるところ、上記・・・・の商品・・・・は、靴ひもを結ばないための仕組みが、・・・・被告各商品の上記特徴とは全く異なるのであるから、『結ばない靴ひも』などと表記され、被告各商品と比較されたり、同じ場所で販売されることがあるとしても、・・・・覆滅事由としての被告各商品の競合品であると認めることはできない」、「以上によると、被告各商品に競合品が存在するため、損害が覆滅されると認めることはできない」、「本件において、特許法102条2項の損害の推定について覆滅事由を認めることはできない」と述べている。 |