知財高裁(令和2年11月5日)“ブルニアンリンク作成デバイス事件”は、「原告は、本件発明は、本件米国仮出願に記載された発明とは異なる発明であるから、パリ優先権の主張は認められないと主張する」、「この点に関する原告の主張を正確に記載すると、本件発明は、・・・・Bピンバーをベースの溝ではなく、ベース上の凸部に嵌め込む方式の構成を含むこと、・・・・において、本件米国仮出願にはない構成を含むからパリ優先権が否定され、その結果、甲1動画との関係で新規性、進歩性を欠き、無効であるというものである」、「甲1によれば、甲1動画に係るツールは、前記Bの構成を有していることが認められる。そして、本件発明の請求項は、『ベース上にサポートされた複数のピン』と定めているのみであって、前記Bの構成を含むことは明らかであるから、この点において、本件発明は、甲1動画との関係で新規性を欠くものといわなければならない。したがって、パリ優先権が認められるかどうかを判断するため、さらに、構成Bが、本件米国仮出願に含まれない構成であるかどうかを判断する必要がある」、「そこでさらに、構成Bが、本件米国仮出願に含まれない構成であるかどうかについて判断するに、たしかに、米国仮出願書類には、ベースに設けた溝にピンバーを嵌め込む態様しか記載されていないが、これは実施例の記載にすぎないし、米国仮出願書類全体を検討しても、ベースにピンバーを固定する態様を、この実施例に係る構成に限定する旨が記載されていると理解することはできない。そして、ベースに凹部を設け、その凹部にピンバーを嵌め込む態様の構成(米国仮出願書類の実施例の記載)と、ベースに凸部を設け、この凸部にピンバーを嵌め込む態様の構成(Bの構成)とは、まさに裏腹の関係にあるものであって、一方を想起すれば他方も当然に想起するのが技術常識であるといえるから、たとえ明示的な記載がないとしても、ベースに凹部を設ける構成が記載されている以上、ベースに凸部を設ける構成も、その記載の想定の内に含まれているというべきである」、「以上によれば、本件発明は、甲1動画との関係で新規性、進歩性欠如の無効事由を有するものとは認められないとした本件審決の判断は、結論において誤りはない」と述べている。 |