知財高裁(令和2年)“アンテナ装置事件発明の詳細な説明に記載された発明の課題は、限られた空間しか有していないアンテナケースを備えるアンテナ装置に既設の立設されたアンテナ素子に加えてさらに平面アンテナユニットを組み込むと相互に他のアンテナの影響を受けて良好な電気的特性を得ることができないという課題であり・・・・、このような課題を当業者が認識するためには、限られた空間しか有しないアンテナ装置において、既設の立設されたアンテナ素子に加えて新たに平面アンテナユニットを組み込むことが前提となる。しかし、請求項1に記載された発明は、そもそもアンテナ素子以外に平面アンテナユニットが組み込まれていないアンテナ装置の発明を含み・・・・、そのような構成の発明の課題は、発明の詳細な説明には記載されていない。そのため、請求項1に記載された発明は、当業者が発明の詳細な説明の記載によって課題を認識できない発明を含むものであり、当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えたものである」、「控訴人は、本件明細書・・・・には、高さ約0mm以下のアンテナケース内に収納されながらも、受信性能が良好なFM・AM共用アンテナを提供する旨の第1の課題が記載されており、第1の課題は、平面アンテナユニットをアンテナケース内に設けるか否かにかかわらず生じる課題であると主張する・・・・。しかし、・・・・控訴人の主張する第1の課題は、本件特許の背景技術の課題であって、出願人が出願した特許(特願2006−315297)においてその課題は解決されたものであり、発明の詳細な説明には、そのような背景技術の課題が解決されてもなお生じる課題として、限られた空間しか有していないアンテナケースを備えるアンテナ装置に既設の立設されたアンテナに加えてさらに平面アンテナユニットを組み込むと、相互に他のアンテナの影響を受けて良好な電気的特性を得ることができないという課題(控訴人の主張する第2の課題に相当する)が示されているものと認められる。そのため、第1の課題は、特許請求の範囲記載の発明により解決すべき課題として発明の詳細な説明に記載された課題であるとは認められない。したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない」、「請求項1に係る特許は、サポート要件(特許法6条6項1号)を充足せず、特許無効審判により無効(特許法123条1項4号)にされるべきものと認められる」と述べている。

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