東京地裁(令和2年12月24日)“基礎コンクリート形成用型枠の支持具事件”は、「乙4考案(主引例)において、公知技術4又は公知技術5(副引例)を組み合わせる動機付け(起因ないし契機)があり相違点1が当業者において容易想到であるといえるかについて検討する。まず、乙4考案は、コンクリート型枠傾倒防止具に係る技術であるところ、公知技術4(乙7)は型枠同士の間隔を保持する間隔保持具に係る技術、公知技術5(乙8)はコンクリート型枠板の保持具に係る技術であり、そのいずれも、コンクリート型枠を固定するための固定具に係る技術であるといえる。そして、傾倒防止を含め、コンクリート型枠の固定が、事柄の性質上、一連の施工の様々な段階において常に求められる普遍的な要請であることに鑑みると、乙4考案と、公知技術4又は公知技術5の技術分野は、互いに関連し、共通性を有するものというべきである。さらに、乙4考案も、公知技術4又は公知技術5も、コンクリート型枠を固定具により固定させるという点において、その作用・機能も共通するといえる。したがって、乙4考案における、型枠傾倒防止具8を縦長外枠2に固定するという技術につき、当業者において、公知技術4又は公知技術5で開示されているような、固定具の外側規制(係止)片及び内側規制(係止)片で外側角部を有するコンクリート型枠を挟んで固定させるという技術的構成を適用する動機付けがあるものというべきである。そうすると、相違点1は、乙4考案(主引例)に、公知技術4又は公知技術5(副引例)を適用することで埋めることができるものであって、当業者において容易想到であるものというほかない」、「これに対し、原告は、公知技術4(乙7)は、・・・・乙4考案のように、2度打ち工法により立ち上がり部を施工する際に外枠の傾倒を防止するための支持具ではないこと、公知技術4における保持具は、そもそも型枠の側端面に取り付けられるものではないことなどを指摘して、公知技術4は、乙4考案と技術分野が関連せず、乙4考案に適用することはできない旨主張する。また、公知技術5(乙8)についても、同様の理由で乙4考案と技術分野が関連せず、乙4考案に適用することはできない旨主張する。しかしながら、当業者においては、乙4考案(主引例)において、コンクリート型枠を保持するため固定具を取り付けて固定させるという構成をとる以上は、その固定のための手段について更に検討するとみるのが自然である。しかして、前記のとおり、コンクリート型枠の固定は、どの段階の施工であるかに関わらず要求される普遍的な要請であることに鑑みると、その際に、コンクリート型枠を固定具により固定させるという点において、共通の作用・機能を有するといえる公知技術4又は公知技術5(副引例)を参照し、これを適用することができると考えるのが合理的というべきである。すなわち、当業者においては、乙4考案において、コンクリート型枠を固定するために使用される固定具としていかなる技術によるものが存在するかを調査し、検討することが想定されるところ、その範囲が、原告の主張するように『2度打ち工法により立ち上がり部を施工する際に外枠の傾倒を防止する金具』あるいは『型枠の側端面に取りつけられるもの』に限定され、公知技術4又は公知技術5には及ばないと認めるに足る合理的理由はない。原告の主張は、乙4考案の技術分野と関連性を有する技術分野の範囲を過度に限定的に捉えることを前提とするものであって採用できず、相違点1に係る容易想到性に係る上記判断を左右するものではない」と述べている。 |