東京地裁(令和2年)“基礎コンクリート形成用型枠の支持具事件型枠保持具のうち、基礎コンクリート形成後に基礎コンクリートから露出した部分を折り取る手段として、予め型枠保持具に折取部を形成すること(サイト注:公知技術2及び公知技術9ないし1)は、本件発明の出願当時において、周知な技術であったと認められる。しかして、乙4考案においては、簡素な構成で且つ施工効率を向上することでコストを低減することができ、コンクリート基礎壁面の外観が損なわれることなく型枠の傾倒を防止するようにしたコンクリート型枠傾倒防止具を提供することを目的とする旨の課題が示されており・・・・、これと同様の課題・作用・機能を有すると認められる上記周知な技術を適用する動機付け(起因ないし契機)があることが明らかであるから、切り欠きに代えて折取部を形成することは、当業者にとって容易想到であったといえる。そうすると、相違点2は、乙4考案(主引例)に、上記周知な技術を適用することで埋めることができるものであって、当業者において容易想到であるものというほかない」、「これに対し、原告は、公知技術2及び公知技術9ないし1について、いずれも2度打ち工法特有の課題解決を図ったものではなく、乙4考案とは技術分野が関連しないこと等を指摘し、公知技術2等を主引例である乙4考案に適用する動機付けがない旨を主張して、本件発明の容易想到性を否定する。しかし、前記説示のとおり、乙4考案においては、簡素な構成で且つ施工効率を向上することでコストを低減することができ、コンクリート基礎壁面の外観が損なわれることなく型枠の傾倒を防止するようにしたコンクリート型枠傾倒防止具を提供することを目的とする旨の課題が示されているところである。しかして、・・・・コンクリート型枠の固定は、どの段階の施工であるかに関わらず要求される普遍的な要請であることに鑑みると、その際に、コンクリート型枠の固定というレベルにおいて共通の技術的課題を有し、これに対し同様の解決手段(コンクリート型枠に固定具を取り付けて固定させるという構成)をとった公知技術2及び公知技術9ないし1を周知な技術として参照し、これを適用することができると考えるのが合理的というべきである。すなわち、当業者においては、固定具を簡易に折り取るための技術を調査し検討することが想定されるところ、その範囲が、原告の主張するように『2度打ち工法特有の課題解決』に関連する技術に限定されるものと認めるに足りる合理的理由はない。原告の上記主張は、乙4考案に適用可能な周知技術の範囲を過度に限定的に捉えることを前提とするものであって採用できず、相違点2に係る容易想到性に係る上記判断を左右するものではない」と述べている。

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