知財高裁(令和2年12月2日)“止痒剤事件”は、「特許法148条1項は、『第132条第1項の規定により審判を請求することができる者は、審理の終結に至るまでは、請求人としてその審判に参加することができる。』として、1項参加人が、特許無効審判又は延長登録無効審判(以下、併せて単に『無効審判』という。)に『請求人』として参加することを明記している。したがって、1項参加人は、特許法179条1項の『請求人』として、被告適格を有するものと解される」、「被告ニプロは、@1項参加人と3項参加人の間には、参加人となるための要件や地位が実質的に異ならない、A審判便覧・・・・によると、1項参加人も原則として任意に取下げができるとされていること、B参加の申請において『請求』が定立されていないこと、C1項参加人が特許法148条1項に基づいて『請求人』となるのは、被参加人が請求を取り下げ、1項参加人が審判手続を続行した場合に限られること、D1項参加人に被告適格を認めなくても手続保障に欠けることはないし、被告適格を認めることが当事者の意思に反し、かつ、弊害が生じるなどと主張し、1項参加人は、被告適格を有しないと主張する」、「1項参加をすることができるのは、『第132条第1項の規定により審判を請求することができる者』であるのに対し、3項参加することができるのは、『審判の結果について利害関係を有する者』であって、参加するための要件が異なっている上、特許法148条2項にあるとおり、1項参加人は、3項参加人とは異なり、被請求人(サイト注:被参加人の誤記と思われる)が請求を取り下げた後においても、審判手続を続行することができるとされているなど、その地位についても異なっているから、1項参加人と3項参加人とで、審決取消訴訟の被告適格について異なった取扱いをしても不合理とはいえない」、「審判便覧・・・・によると、1項参加人も3項参加人と同様、被参加人が審判請求を取り下げない限り、被請求人が答弁書を提出した後でも、被請求人の同意なく参加を取り下げることができるとされている。また、1項参加の申請に際して、特許法施行規則様式第65によると、参加申請書に『請求』を記載することは求められていない。しかし、審判便覧の上記取扱いについては、被参加人が取下げをしない限り、特許法155条2項が保護しようとしている被請求人の利益、すなわち、審決を得て、審判請求の理由がないことを確定するという利益の保護は図られているのであるから、その段階で1項参加人の取下げについて被請求人の同意を要する実益は乏しいことから、上記のように取り扱われていると解され、上記の取扱いが、1項参加人が『請求』を定立していないことに基づくものとはいえず、1項参加人が特許法179条1項の『請求人』に当たらないことの理由とはならない。また、特許法施行規則様式65についても、1項参加人の請求は、被参加人の請求と同一のものであるとの理解の下に上記のような様式が定められていると解され、そのことから1項参加人が『請求』を定立していないということはできず、1項参加人が、特許法179条の『請求人』に当たらないことの理由とはならない」、「特許法148条1項は、被参加人が請求を取り下げた場合に限り、1項参加人が『請求人』となるとは規定しておらず、1項参加人が同項に基づいて『請求人』となるのは、被参加人が審判請求を取り下げ、1項参加人が審判手続を続行した場合に限られると解することはできない。また、1項参加人に審決取消訴訟の被告適格を認めることが1項参加人の意思に反する事態を招来するとは認められない。1項参加人が多数いるからといって、そのことにより、訴訟手続がいたずらに煩雑化したり、遅延を招いたりして、訴訟経済に反するとは認められない。さらに、被告ニプロは、審決取消訴訟の係属中に被参加人が無効審判請求を取り下げた場合、『請求人』として1項参加人が審決取消訴訟を受継することができると主張するが、いかなる法的根拠に基づいてそのような『受継』ができるのか明らかではない。また、仮に、このような『受継』をすることができたとしても、1項参加人が受継した時点での訴訟の進行状況によっては、主張立証が制限されることもあり得るといえ、1項参加人の手続保障に欠けるところがないとはいえない」と述べている。 |