知財高裁(令和2年)“美容器事件5文献の記載によると、乙5発明は、ローラ保持部4において、ローラ部5を回転自在に保持することを内容とする技術であり、ローラ部5の回転状態を良好なものとすることを課題の1つとするものであり、ローラ部5は、ベアリング8を介して小径部4bに支持されるという構成により、ローラ部5を回転自在なものとしていると認められるところ、・・・・乙6文献及び乙7文献の記載によると、乙6技術及び乙7技術は、支持板又は取付部材にフランジ付き滑り軸受け又は軸受けを係合するという技術であるが、支持板又は取付部材がローラ部5に対応し、フランジ付き滑り軸受け又は軸受けがベアリング8に対応するとしても、支持板又は取付部材はいずれも固定されており、フランジ付き滑り軸受け又は軸受側の軸が回転することが認められるから、乙5発明と乙6技術及び乙47技術とは、その技術思想が大きく異なっているという べきである。また、乙5文献の記載からすると、乙5発明は、美容マッサージ器に関する発明であり、従来の美容ローラにおいては、ローラの回転状態が良好でなく皮膚への刺激が十分でないこと、構造が複雑であること、皮膚への接触状態が良好でないことなどの問題があったことから、この問題を解決するために発明されたものであることが認められるところ、乙6文献の記載によると、乙6技術は、ファクシミリ等の紙送り機構で使用される軸の支承のための軸受けに関する技術であり、従来の技術では、別体の抜け止め用のリング4を必要としたため、構成部品点数と組立工程数の増大を招くこと、上記抜け止め用のリングを不要とすると、組立ての作業に大きな操作力が必要となったり、軸との嵌め合い精度を高精度化することが難しいことなどの問題があるため、これらの問題を解決しようとした技術であることが認められ、また、乙7文献の記載によると、乙7技術は、薄板から成る取付部材に軸受けを固定する軸受けの固定構造に関する技術であり、従来の技術では、軸受けの外周面に鍔部を形成し、該鍔部においてビスなどの手段により固定する方法又は軸受けを取付部材に圧入固定する方法が採用されていたが、これらの技術には、固定作業の効率が悪い、軸受けの内周面の内径にばらつきが生じるなどの問題があり、また、これらの問題を解決しようとした技術にも、軸受けが回転し、軸受けの取付部材との当接部分に摩耗が生じるなどの問題があるため、これらの問題を解決しようとした技術であることが認められ、このように、乙5発明と乙6技術及び乙7技術との間では、技術分野や課題が異なる。したがって、乙5発明に乙6技術や乙7技術を適用する動機付けは認めら れない」、「これに対し、一審被告は、軸受けは、美容器に限らず、汎用性のある機構として広く知られているのである・・・・から、乙5発明と乙6技術及び乙7技術とは機能が同一である以上、両者の課題、目的、用途の相違が動機付けを否定する理由にならないと主張するが、前記・・・・のとおり、両者では、技術思想が大きく異なる上に、技術分野や課題も異なることを考慮すると、軸受けとしての機能は同一であったとしても、乙5発明に乙6技術や乙7技術を適用する動機付けは認められないというべきである」と述べている。

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