東京地裁(令和2年2月5日)“ホワイトカード使用限度額引上げシステム事件”は、「本件発明の『ホワイトカード』の意義に関し、本件特許請求の範囲には明示的な記載はないが、・・・・一般的に、ホワイトカードは、『カード会社が個人向けに発行する最もベーシックなクレジットカード』・・・・を意味するものと認められる」、「前記判示の『ホワイトカード』の一般的な意義に加え、本件明細書等における・・・・記載、特に本件発明の課題がクレジット契約時に設定された使用限度額の引上げにあることなどによれば、本件発明の『ホワイトカード』は、クレジットカードを意味すると解することが相当である。他方、同明細書等には『ホワイトカード』がプリペイドカードやデビットカードを含む旨の明示的な記載又はそれを前提とする記載は存在しないことに照らすと、本件発明における『ホワイトカード』がプリペイドカード等を含むと解することはできない」、「原告は、『ホワイトカード』の意義につき、本件明細書等に『本発明は、商品購入などに際して決済のために使用されるカードに関して、その使用限度額を適宜変更可能とし、さらにその変更を安全に行うための技術に関する。』(段落【0001】)、『買い物などの支払に利用することができるカード』(段落【0016】)、『『ホワイトカード』とは、本システムによって管理されるカードをいい、もちろんその名称はホワイトカードに限定されない』(段落【0036】)などと記載されていることによれば、『ホワイトカード』は、『商品購入などに際して決済のために使用されるカード』、『買い物などの支払に利用することができるカード』を意味すると主張する。しかし、本件明細書等の段落【0001】及び【0016】の『カード』とは『ホワイトカード』であるところ、『ホワイトカード』が一般的にクレジットカードを意味することは前記判示のとおりであり、また、本件発明の効果に関する記載は『ホワイトカード』がクレジットカードである旨の記載がある一方、本件明細書等には『ホワイトカード』がプリペイドカード等を含む旨の記載は存在しないことは前記判示のとおりである。そうすると、段落【0001】及び【0016】の記載から直ちに本件発明の『ホワイトカード』がプリペイドカード等を含むものであると認めることはできない。また、『『ホワイトカード』・・・・の名称はホワイトカードに限定されない』(段落【0036】)との記載は、カードの名称が『ホワイトカード』に限定されないことを意味するにすぎず、同記載をもって、本件発明の『ホワイトカード』がクレジットカードに限定されないと解することはできない」、「原告は、本件明細書等の段落【0002】〜【0005】が『クレジットカード』という語を用いて背景技術等の説明をしているのに対し、段落【0006】以降が『ホワイトカード』という語を用いて説明しているのは、本件発明の発明者がクレジットカードとは全く異なるカードに関する発明を意識していたからであると主張する。しかし、本件明細書等の段落【0002】〜【0005】は、単なる背景技術等の説明にとどまらず、本件発明の課題に関する記載であるから、同各段落における『クレジットカード』との記載が単なる例示であると解することはできず、また、本件明細書等の実施例に関する段落【0026】においても『カードを発行する信販会社などの装置に対してカードの使用限度額を引上げる命令を出力する・・・・と、・・・・『1万円』の入金があったことが信販会社などにて確認され、当該カードをその1万円分増加した限度額内で使用することができる』と記載され、当該カードがクレジットカードであることが前提とされている。これに対し、原告は、同段落に信販会社『など』と記載されていることや、段落【0028】に『上記説明における各装置を管理する主体は一例であって、それ以外の主体によって管理されても良い』と記載されていることなどを根拠に、ホワイトカードの発行会社には、プリペイドカードの発行・管理会社なども含み得ると主張するが、本件明細書にはプリペイドカードなどクレジットカード以外のカードに係る記載は存在しないことに照らすと、同段落の『信販会社など』はクレジットカードの発行会社を意味すると解するのが相当である」、「以上のとおり、原告の上記主張はいずれも採用し得ない」と述べている。 |