東京地裁(令和2年)“ハーネス型安全帯の着用可能な空調服事件被告は、本件考案は、被告各製品の売上に部分的にしか貢献しておらず、その寄与率は8%であるとし、その理由として、@本件考案は、空調服の背中部分に設けられた取出し筒に技術的特徴があり、実質的には空調服の一部の構造に係るものであること、A空調服の中心的な機能は、ファンにより外気を服内に取り込んで排出することで体温を冷却することにあるのに対し、本件考案に係る取出し筒は、ランヤードを取り出すための補助的な機能を提供するものにすぎず、使用場面も限定されていること、B被告各製品には、特許第4329118号、特許第4399765号、特許第6158675号の各特許発明が実施され、これらによって高い機能性及び実用性を備えるものとなることが需要者の購入動機に結び付いていることなどを主張する。しかしながら、本件考案は、空調服全体の考案であって、背中部分に設けられた取出し筒に限定した考案ではない。また、被告各製品の需要者は、高所作業等のために必要となるハーネス型安全帯を着用することができる空調服として、背中部分に取出し筒を設けていない通常の空調服と比べて販売単価の高い被告各製品をあえて購入したものであること、具体的には、・・・・被告各製品の販売単価とこれらに対応するものとして被告が販売している通常の空調服の販売単価を対比すると、被告製品1及び4は約5%、被告製品2及び5は約3%、被告製品3及び6は約8%割高であること、被告のフルハーネス対応空調服に係る宣伝広告・・・・にも、背中部分に設けられた取出し筒にランヤードを通して使用されている空調服の写真が大きく掲載されていることなどからすると、本件考案は、相応の顧客誘引力を有していたと認めるのが相当である。さらに、被告各製品が他の特許発明の実施品であると認められたとしても、被告が指摘する他の特許発明の実施品であることが被告各製品の売上げに貢献していると認めるに足る証拠はない。以上のとおり、被告が主張する上記@ないしBを理由とする推定覆滅は認められない」と述べている。

特許法の世界|判例集