東京地裁(令和2年)“ハーネス型安全帯の着用可能な空調服事件バートル、村上被服、ブレイン、クロダルマ、マキタ、シンメン、山真製鋸等は、いずれも、本件対象期間中に、空調服の背中部分に穴が開いた構造を備えるなどして、ハーネス型安全帯を着用することができる構成を有する空調服を販売しており、同販売に当たっては、フルハーネス対応空調服であることを宣伝広告していた」、「平成9年ないし平成1年(令和元年)における電動ファン付きウェアの市場における@被告の製品及び同製品を取り扱う企業の製品(以下、これらを一括して『被告の製品』ということがある。)、A原告の製品及び同製品を取り扱う企業の製品(以下、これらを一括して『原告の製品』ということがある。)、B第三者製品のシェアは次のとおりである」、「平成9年・・・・ @被告の製品:約0% A原告の製品:約0% B第三者製品(マキタ、タジマ、バートル、村上被服、シンメン、クロダルマ、ブレイン等の製品:約0%」、「平成0年・・・・ @被告の製品:約3% A原告の製品:約3% B第三者製品(バートル、マキタ、タジマ、山真製鋸、シンメン、村上被服、ブレイン等の製品:約3%」、「平成1年(令和元年)・・・・ @被告の製品:約0% A原告の製品:約0% B第三者製品(バートル、マキタ、タジマ、山真製鋸、シンメン、クロダルマ、村上被服、ブレイン、桑和、三愛等の製品:約0%」、「そこで検討すると、第三者製品のうち、少なくとも、前記・・・・の会社が販売していた空調服は、空調服の背中部分に穴が開いた構造を備えるなどして、ハーネス型安全帯を着用することができる構成を有する空調服であり、フルハーネス対応であることを宣伝広告された空調服であるという点で、市場において被告各製品と競合関係に立つ製品であると認められるから、いずれも、被告各製品の競合品に当たると認められる。そして、電動ファン付きウェアはフルハーネス対応空調服を含むものであり、フルハーネス対応空調服は背中部分に穴を開けるなどの加工はされているものの、通常の空調服と基本的な構成は同一であることからすると、フルハーネス対応空調服の市場のシェアが電動ファン付きウェアのシェアと大きく異なるものであることは通常は考え難いところ、・・・・電動ファン付きウェアの市場における第三者製品の多くが、フルハーネス対応空調服を販売している・・・・会社の製品であること、原告において電動ファン付きウェアと比べてフルハーネス対応空調服(原告製品)を特に多く販売していたとは認められないことなどにも照らすと、フルハーネス対応空調服の市場のシェアは電動ファン付きウェアと同一であったと推認するのが相当であり、これを覆すに足る証拠はない。したがって、平成9年から平成1年(令和元年)までのフルハーネス対応空調服の市場のシェアは、・・・・電動ファン付きウェアについて認定したものと同様のものであったと推認され、そうであれば、本件対象期間における第三者製品と原告製品の市場におけるシェアは、概ね同等のものであったと認められるから、被告各製品が販売されていなかったとしても、被告各製品に向けられた需要の約0%は、第三者製品に向かった可能性があると認められる」、「被告は、被告の販売先の多くは、ハーネス型安全帯を含む工具や建築資材を取り扱う業者であり、フルハーネス対応空調服を販売しやすい販売先であるのに対し、原告は、そのような販売網を有していないことを理由とする推定覆滅を主張する。しかしながら、フルハーネス対応空調服は、特定の販売先にしか販売されないような性質のものであるとは認められないから、被告各製品が販売されていなければ、その需要が原告製品に向かった可能性があることを否定することはできず、被告各製品と原告製品の販売先の違いを理由とする推定覆滅は認められない」、「被告は、・・・・取出し筒の開口方向、その大きさ、フックの保持構造の点で、被告各製品の性能は原告製品を上回ることを理由とする推定覆滅を主張する。しかしながら、本件全証拠によっても、被告が指摘するような空調服の部分的な構造をもって、被告各製品が原告製品と比べて優れた性能を有するとは認め難く、それらが原告製品と異なることが被告各製品の売上げに貢献しているといった事情も認められないから、いずれにしても推定覆滅は認められない」、「被告は、被告らには、世界で初めて空調服を開発、製品化して、平成7年までに約4万着を販売してきた実績があるところ、被告らの空調服は需要者から高い評価を受けていること・・・・、被告らの空調服の一部が全関東電気工事協会推奨品に認定されていることなどに照らすと、需要者は、被告らの空調服の周知性及び強いブランド力に魅力を感じ、被告各製品を購入したということができる旨主張する。しかしながら、被告が指摘する一部の者によるウェブサイトへの書き込み・・・・をもって被告らの空調服製品の周知性や強いブランド力を認めることはできず、全関東電気工事協会推奨品に認定されたことの売上げへの貢献の程度も明らかとはいえない。また、原告も、ユニフォームメーカーとしての実績、空調服の製造、販売実績を有しており・・・・、平成9年ないし平成1年(令和元年)の電動ファン付きウェアの市場における原告の製品のシェアは被告の製品と大きく異なるものでなかったものであるから・・・・、被告が主張する被告らにおける空調服の販売実績を踏まえたとしても、被告らの空調服製品の周知性やブランド力を理由とする推定覆滅を認めるに足りないというべきである」、「以上のとおり、被告各製品の製造販売に係る一連の侵害行為により被告らが受けた利益の合計額は、3075万0055円であると認められ、その0%については、推定覆滅が認められる。したがって、実用新案法8条2項(サイト注:特許法102条2項に相当)に基づく損害額は、1537万5027円であると認められる」と述べている。

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