知財高裁(令和2年)“タブ端子の製造方法事件特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合において、付加される訂正事項が明細書等に明示的に記載されている場合や、その記載から自明である事項である場合には、そのような訂正は、特段の事情のない限り、新たな技術的事項を導入しないものであると認められ『願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面・・・・に記載した事項の範囲内において』するものということができる」、「訂正事項1(サイト注:訂正前の請求項1における『リン系溶剤で洗浄する工程』との記載を『リン系溶剤で洗浄して、前記溶接部分の少なくとも一部に、換算で厚さ0n以上の、(xは2〜4を表す)からなる皮膜を形成する工程』とする訂正)に関し、明細書等には、リン系溶剤による洗浄のみで『換算で厚さ0n以上の、(xは2〜4を表す)からなる皮膜』を形成するという明示的な記載は存在せず、このことは被告も争っていない」、「本件明細書・・・・には、イオン注入はリン系溶剤による洗浄工程の後に行うことが記載されている。そして、イオン注入により形成される皮膜についての『この程度のイオン注入量とすることにより、溶接部分の表面に形成されたxのリン系化合物皮膜またはn表面上に形成されたx皮膜の厚みを換算で0n以上とすることができ、』との記載・・・・に照らせば換算で厚さ0n以上の、(xは2〜4を表す)からなる皮膜』を形成する方法は、リン系溶剤による洗浄工程の後にイオン注入を行うことであると理解することができる。本件明細書のその余の記載によっても、リン系溶剤による洗浄工程のみによって『換算で厚さ0n以上の、(xは2〜4を表す)からなる皮膜』を形成するという事項が明細書等の記載から自明であると解すべき根拠もない」、「以上によれば、訂正事項1は『願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面・・・・に記載した事項の範囲内において』するものということはできず、特許法134条の2第9項の準用する同法126条5項に適合しない」と述べている。

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