知財高裁(令和2年)“基板保持装置事件引用発明は、半導体装置の製造技術、特に、半導体ウエハを静電吸着保持する技術に関するものであるのに対し・・・・、引用文献2は、半導体装置の製造工程における半導体ウエハの固定操作に関するものであるから・・・・、半導体装置の製造における、半導体ウエハを保持(固定)する装置に関するという点で、技術分野は同一である。また、両者とも、ウエハに対する処理を行うため、静電吸着によりウエハを保持するものである点・・・・、ウエハを冷却するため、静電チャック上に流体溝(冷却溝)を設け、流体溝と連通し、かつ静電チャックを貫通する流体孔を介して、冷却ガスを供給するための機構を有する点・・・・において、作用・機能の面でも共通点を有する。加えて、引用発明では冷却ガスを排出するため、引用文献2に記載の技術ではウエハの下面を負圧にして差圧によりウエハを仮固定するためと目的は異なるものの、流体溝内の流体を流体孔から排出する手段を有する点・・・・でも共通している。さらに、引用文献1は、冷却溝によるエッチングレートむらの発生を防止するため、冷却溝をごく浅くするという発明を開示する文献であるが・・・・、ウエハを保持する装置に関するものである以上、ウエハを静電チャック上の正しい位置に載置し、静電吸着により適切に保持することを当然の前提としていると解される。しかるに、半導体の各製造工程を経るうちにウエハに多少の反りが生じることや、静電吸着前のウエハに反りが生じていると、それが原因となって、静電吸着不安定や、異常放電誘発などの不具合が生じることは、引用文献2・・・・や特開2003−31816・・・・に示されるように、当業者にとって、技術常識であったと認められる。そうだとすれば、当業者であれば、静電吸着による固定しか記載されていない引用発明には、ウエハに反りがあることで静電吸着が不安定になることなどの課題があることを認識し、かかる課題を解決するとする引用文献2に記載された技術を組み合わせる動機付けがあるというべきである」、引用発明に引用文献2に記載の技術を組み合わせて、本願発明に想到することは容易であったといえる」と述べている。

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