東京地裁(令和2年)“セルロース粉末事件本件明細書の特許請求の範囲には平均重合度の測定方法は記載されていないが、発明の詳細な説明には、・・・実施例・比較例における各物性の測定方法が記載されており、平均重合度は第十三改正日本薬局方、結晶セルロースの確認試(3に記載された銅エチレンジアミン溶液粘度法により測定された値という具体的な本件測定方法により測定された値である旨の記載がある。そして、本件明細書において、本件測定方法(サイト注:上記の銅エチレンジアミン溶液粘度法)に基づいて測定された各実施例、比較例の平均重合度が記載された上で、それらのセルロースが持つ諸機能、すなわち本件各発明の効果が検証されている。セルロースの極限粘度から重合度又は平均重合度を求めるための相関式は、これまで多数の式が提案され、用いる相関式によって同じ物の平均重合度の値が相当に異なる場合もあるところ・・・・、平均重合度等の物性等で特定された本件発明1及び2において、具体的に特定された本件測定方法により測定された平均重合度の値を有する実施例、参考例について発明の効果が検討されているなど、上記に記載した事情がある。これらに照らせば、特段の事情がない限り、当業者は、本件測定方法による平均重合度が本件発明1及び2の構成要件1B・2Bの範囲に入れば当該要件を充足すると考えるといえ、また、そのように解することによって第三者に不測の不利益が生じるとはいえないから、本件測定方法により測定された平均重合度が本件発明1及び2の構成要件の範囲内であれば、当該セルロースは同構成要件を充足する」、被告は、本件明細書に実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を制限しないという記載があることを挙げて、平均重合度の測定方法が本件測定方法に限定されない旨主張する。しかし、上記は、発明の範囲が実施例に記載した具体的な値を有するセルロースに限定されないことを記載したものともいえるし、本件明細書には、平均重合度について、具体的な測定方法である本件測定方法の記載がある一方で、他の方法についての記載がなく、また、用いる式等によって同じ物の平均重合度の値が相当に異なる場合もあるなど、前記・・・に述べた事情から、上記記載は、特段の事情がない限り、本件測定方法により測定された平均重合度が本件発明1及び2の構成要件の範囲内であれば、当該セルロースは同構成要件を充足するという判断を左右するものではない」と述べている。

特許法の世界|判例集