東京地裁(令和2年3月26日)“セルロース粉末事件”は、「特許請求の範囲には、・・・・セルロース粉末について、その平均重合度が本件加水分解条件で加水分解後、粘度法により測定されるレベルオフ重合度より5〜300高いという本件差分要件が記載されている。本件明細書の発明の詳細な説明には、セルロース粉末について、その重合度とレベルオフ重合度の差が5未満では粒子L/Dを特定範囲に制御することが困難となり成型形が低下して好ましくなく、300を超えると繊維性が増して崩壊性、流動性が悪くなって好ましくないと記載されている。しかし、それらの数値に基づく上記の効果等について具体的な例がなくとも当業者が理解することができたことを認めるに足りる証拠はない」、「本件差分要件は、粉末セルロースについての平均重合度と本件加水分解条件下でのレベルオフ重合度の差に関するものであるところ、明細書の発明の詳細な説明には、実施例について、粉末セルロースの本件加水分解条件でのレベルオフ重合度についての明示的な記載はなく、また、優先日当時の技術常識によっても、それが記載されているに等しいとはいえない。したがって、本件明細書の発明な詳細には、本件特許請求の範囲に記載された要件を満たす実施例の記載はないこととなる。そうすると、本件明細書の発明な詳細において、特許請求に記載された本件差分要件の範囲内であれば、所望の効果(性能)が得られると当業者において認識できる程度に具体的な例が開示して記載されているとはいえない」、「本件発明1及び2は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないから、特許法36条6項1号に違反する」と述べている。 |