東京地裁(令和2年)“セルロース粉末事件「被告は、本件発明1及び2は天然セルロース質物質の加水分解によって得られるセルロース粉末という要件(構成要件1A及び2A)によって特定されているところ、この要件はセルロース粉末に係る物の発明をその物の製造方法で特定した、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレーム(PBPクレーム)であり、本件発明1及び2は、明確性要件に違反すると主張する」、当業者には、原料パルプから医薬分野等で使用されるセルロースを得るに当たっては、原料パルプを機械的に粉砕するという工程を経てセルロースを得ることのほか、加水分解の工程を経てセルロースを得ることが知られていた。そして、十三薬局方や本件明細書等において加水分解に特段の説明が付されていないことからすれば、本件特許の優先日当時、加水分解は、当業者にとってセルロースの一般的な製造方法であったと認められるのであり、かつ、構成要件1A・2Aには加水分解の工程に関して、条件その他の特別な限定はない。加水分解の工程を経たことによって得られたセルロース自体は既に広く知られていたものといえ、そのようなセルロースについて、機械的に粉砕されて得られたセルロースとは特性等において異なるなど、その一般的な特性等についても知られていたと認められる。これらを考慮すると天然セルロース質物質の加水分解によって得られるセルロース粉末との記載に接した当業者は、そこに記載されているセルロース粉末の特性等を理解することができたといえる。そうすると、そのセルロース粉末について不明確なところはない。被告の上記主張には理由がない」と述べている。

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