知財高裁(令和2年)“液体を微粒子に噴射するノズル事件被控訴人は、イ号製品のノズルは本件噴霧乾燥(1の一部品であって、本件発明4及び6は当該ノズル部分にのみ実施されていること・・・・は、本件推定を覆す事情である旨主張する」、「本件噴霧乾燥(1の限界利益中には、ノズル以外の設備又はその部品に対応する部分が大部分を占めており、Advanced社(サイト注:本件噴霧乾燥(1の販売先である台湾企業であり、以前に控訴人との間で噴霧乾燥装置の取引交渉があり、ラボ機の性能試験に合格したが受注には至らなかった)の本件噴霧乾燥(1の購入動機の形成には、ノズル以外の設備及びその性能も寄与又は貢献しているものと認められること、本件発明4及び6は、本件噴霧乾燥(1のノズル部分に関する発明であって、装置全体の発明ではないことに鑑みると、イ号製品のノズルが本件噴霧乾燥(1の一部品であることは、本件推定を覆す事情に該当するものと認められる」、「被控訴人は、本件噴霧乾燥(1は、ディスク式とノズル式を兼用する噴霧乾燥機である上、ジェット流同士を外部衝突点で衝突させて微粒化する外部衝突型の外部混合方式という独自の技術(被控訴人保有の特許第3554302号・・・・、特許第471881・・・・)を採用し、粗大粒子径の発生を抑制して粒子径を揃えること(粒子径の均一化)が可能であるのに対し、控訴人の製品には、上記兼用機が存在せず、粒子径の均一化が困難であった点において、本件噴霧乾燥(1は、控訴人の製品より高品質であることが顧客の購買動機の形成に大きな要因となり、これに付加して被控訴人の本件噴霧乾燥(1の受注に至るまでの営業努力やブランド力も購買動機の形成に貢献したから、これらの事情は本件推定を覆す事情となる旨主張する。しかしながら、・・・・本件噴霧乾燥(1がディスク式とノズル式を兼用する噴霧乾燥機であることや本件噴霧乾燥(1のノズルがジェット流同士を外部衝突点で衝突させて微粒化する外部衝突型の外部混合方式であるという技術に着目し、それらが本件噴霧乾燥(1の購買動機の形成に大きな要因となったことを認めるに足りる証拠はない。また、・・・・控訴人の製品においては粗大粒子径の発生を抑制して粒子径を揃えること(粒子径の均一化)が困難であったことを認めるに足りる証拠はない。さらに、被控訴人のブランド力が本件噴霧乾燥(1の購買動機の形成に寄与ないし貢献したことを認めるに足りる証拠はない。同様に、被控訴人が本件噴霧乾燥(1の受注に至るまでに通常の範囲を超える顕著な営業努力をしたことが本件噴霧乾燥装(1の購買動機の形成に寄与ないし貢献したことを認めるに足りる証拠はない。したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない」、「被控訴人は、微粒化用ノズルは、ノズル単品の販売を行う多数のメーカーが存在し、他社製品に取り換え可能な部品であるから、被控訴人が本件噴霧乾燥(1を受注しなければ、控訴人が受注したであろうという推定はおよそ成り立たず、このような競合他社及び競合品の存在は、本件推定を覆す事情となる旨主張する。しかしながら、微粒子化用のノズルについては、スプレーイングシステムジャパン合同会社、株式会社いけうち、株式会社共立合金製作所、新倉工業株式会社、GEAプロセスエンジニアリング株式会社、SPX社、アトマックス社、中国BTR等の他社製品が存在することが認められるが・・・・、一方で、噴霧乾燥機(スプレードライヤ)は、顧客の求める乾燥粉体の仕様、装置の性能等に応じて設計製作されるオーダーメイド製品であり、ノズルが選定された上で、当該ノズルに適合させた液体流や気体流の供給構造が構築され、噴霧乾燥機全体が設計されること、Advanced社において、控訴人及び被控訴人以外の他社のノズルを使用した噴霧乾燥機の購入を具体的に検討していたことを認めるに足りる証拠はないことに照らすと、他社製品の存在は、本件推定を覆す事情となるものと認めることはできない。したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない」、「以上を前提に検討するに、前記・・・・認定の本件推定を覆す事情、・・・・噴霧乾燥機における微粒化装置(ノズル)の技術的位置付け並びに本件発明4及び6の技術的意義を総合考慮すると、Advanced社の本件噴霧乾燥(1の購買動機の形成に対する本件発明4及び6の寄与割合は0%と認めるのが相当であり、上記寄与割合を超える部分については本件噴霧乾燥(1の限界利益の額と控訴人の受けた損害額との間に相当因果関係がないものと認められる。したがって、本件推定は上記限度で覆滅されるから、特許法102条2項に基づく控訴人の損害額は、本件噴霧乾燥(1の限界利益の額(●●●●●●●●●円)の0%に相当する●●●●●●●●●円と認められる」と述べている。

特許法の世界|判例集