知財高裁(令和2年5月28日)“ポリオレフィン系延伸フィルムの製造方法事件”は、「原告は、実施例及び比較例の記載・・・・は、図4の装置を用いており、表面に凹凸構造を有する冷却ロールが樹脂層には当たらず、樹脂層とは反対側の面に当たるようになっているから、これらの記載によっても、本件発明6によって、『優れた層間接着強度でラミネートされた多層ポリオレフィン延伸フィルムを提供』されているのか否かを理解することができず、サポート要件に違反する旨主張する。本件発明6の製造方法の各ステップを経て製造されたポリオレフィン系延伸フィルムは、実施例1のポリオレフィン系延伸フィルムとは、本件発明6の空気チャンネルが実施例1では形成されない点で異なり、実施例2のポリオレフィン系延伸フィルムとは、空気チャンネルの形成場所が本件発明6では樹脂層であるのに対し、実施例では第2のスキン層である点で異なる。しかし、本件明細書・・・・の記載によれば、巻取時にフィルムとフィルムとの間に存在していた空気が空気チャンネルから外部に抜けることにより、しわが寄ることを効果的に防止する空気流れ通路を提供することで、巻取時のしわ寄りを効果的に防止することを理解することができる。そして、表面に凹凸構造を有する冷却ロールが樹脂層・・・・側に当てられた場合であっても、巻き取られたフィルムに空気チャンネルが形成されることは、スキン層に空気チャンネルが形成された実施例2の場合と同様であるから、巻取時にフィルムとフィルムとの間に存在していた空気が空気チャンネルから外部に抜けることにより、しわが寄ることを効果的に防止する空気流れ通路を提供し、巻取時のしわ寄りを防止する効果を奏するものと解される。また、本件発明6の製造方法の各ステップを経て製造されたポリオレフィン系延伸フィルムは、実施例1、2のポリオレフィン系延伸フィルムと各層の材料は同じであり、各層の層間の状態に違いがあることはうかがわれない上、空気チャンネルは、空気流れ通路を提供することにより、巻取時のしわ寄りを効果的に防止するものであるから、空気チャンネルが設けられているのが、フィルムの表面であるか樹脂層の側であるかによって、層間接着強度が大きく変わると解すべき根拠はない。そうすると、当業者は、実施例、比較例をみれば、本件発明6のポリオレフィン系延伸フィルムについても、実施例1、2と同様に、第1のスキン層と樹脂層との優れた層間接着強度、樹脂層と被着体(紙)との優れた層間接着強度を有することや、巻取時のしわ寄りを防止する効果を奏することが理解できるというべきである。したがって、図4の装置を用いた実施例及び比較例の記載の記載が本件発明6と整合しないとしても、それのみをもってサポート要件違反となるものではない。よって、原告の主張は採用できない」と述べている。 |