大阪地裁(令和2年)“クランプ装置事件本件第1補正後と本件第2補正後の特許請求の範囲の各記載を見ると、本件第1補正後の特許請求の範囲は、スイングクランプ及びリンククランプいずれのタイプのクランプ装置をも含むと解し得る記載であるのに対し、本件第2補正後の特許請求の範囲は『出力ロッドを退入側に駆動するクランプ用の油圧シリンダとを備え(請求項1)及び『出力ロッドを進出側に駆動するアンクランプ用の油圧シリンダとを備え(請求項3)とあるとおり、スイングクランプタイプのクランプ装置であることを明記しており、文言上はリンククランプタイプのクランプ装置を含むとは解し得ない」、「本件特許に係る明細書においては、出願当初から本件明細書に至るまで、従来技術としてスイングクランプタイプのクランプ装置に関する特許文献1及びリンククランプタイプのクランプ装置に関する特許文献2が挙げられるとともに、本件発明の実施例としてスイングクランプタイプのクランプ装置が示されている」、「原告は、本件第2補正の際に提出した意見書・・・・で、請求項1に係る補正につき、本件拒絶理由通知での審査官の指摘(サイト注:明確性要件違反)に対して『補正後の請求項1では『前記出力ロッドを退入側に駆動するクランプ用の油圧シリンダ』と規定しております。・・・・補正後の請求項1に係る本願発明において『第1油路』及び『第2油路』や、両流路の接続部にある『流量調整弁』が、何のために在って何をしているのかという点については明確であると思料いたします。よって、ご指摘の記載不備は解消し得たものと思料致します』との補足説明をしている」、以上の事情を踏まえて本件第1補正から本件第2補正に至る経緯を見ると、客観的、外形的には、原告は、本件第1補正後の特許請求の範囲請求項1の記載によれば、その構成はスイングクランプとリンククランプいずれのタイプのクランプ装置も含むものであることを認識しながら、本件拒絶理由通知を受けて行った本件第2補正により、敢えて補正後の特許請求の範囲にリンククランプのタイプのクランプ装置を含むものとして記載しなかった旨を表示したものと理解される。そうである以上、本件においては、本件第2補正においてリンククランプのタイプのクランプ装置が特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるという特段の事情が存する。したがって、被告製品群4〜6は、本件発明との関係で、均等の第5要件を充足しない」と述べている。

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