知財高裁(令和2年6月11日)“発光装置事件”は、「本件訂正後の特許請求の範囲請求項1には、『前記樹脂パッケージの前記第1乃至第4外側面それぞれにおいて、前記切り欠き部に埋め込まれた前記樹脂部と、前記リードの上方に形成された前記樹脂部と、前記樹脂部から露出した前記リードとが同一面に形成されて、切断面を構成しており、』と記載されているところ、これによれば、樹脂部とそこから露出したリードとが『同一面に形成されて、切断面を構成して』いるものをいうと解される。また、本件明細書には、『上金型61と下金型62とで挟み込まれた金型内に、光反射性物質26が含有される熱硬化性樹脂23をトランスファ・モールドして、リードフレーム21に樹脂成形体24を形成する』こと・・・・及び『切り欠き部21aに沿って樹脂成形体24とリードフレーム21とを切断する』こと・・・・が記載されているから、樹脂成形体を形成後に切り欠き部に沿ってリードフレームと熱硬化性樹脂の両方を切断すれば、樹脂パッケージの外側面において、切り欠き部に埋め込まれた樹脂部と、リードの上方に形成された樹脂部と、樹脂部から露出したリードとは必然的に同一面に形成されるものと認められ、そのことは、本件明細書の図1からも明らかである。したがって、特許請求の範囲請求項1にいう『同一面』とは、樹脂パッケージの外側面において樹脂部とリードとが同一面に形成されることを意味するものと解釈することができる」、「原告は、本件明細書の発明の詳細な説明において、『略同一面』という文言について『樹脂部とリードとは略同一面に形成されている。この略同一面とは同じ切断工程で形成されたことを意味する。』との特別な定義付けがされていることを指摘し、これと『同一面』という文言が同義であると直ちには理解できないとして、明確性要件の適合性を争う。しかし、特許請求の範囲請求項1及び2にいう『同一面』とは、樹脂パッケージの外側面において樹脂部とリードとが同一面に形成されることを意味するものと解釈することができることは、前記・・・・のとおりである。他方、本件明細書の発明の詳細な説明の『略同一面』については、『樹脂部とリードとは略同一面に形成されている。この略同一面とは同じ切断工程で形成されたことを意味する。』・・・・というものであり、前記『同一面』と同義のものである。よって、特許請求の範囲に記載された『同一面』という用語と、発明の詳細な説明に記載された『略同一面』という用語とが、異なる意味で用いられていると解すべき根拠は見当たらず、そうすると、発明の詳細な説明において専ら『略同一面』という文言が用いられているからといって、発明の詳細な説明に記載された製造方法により、樹脂パッケージの外側面において樹脂部とリードとが『同一面』に形成されるという当業者の理解が妨げられるものではない。原告の主張は理由がないというべきである」と述べている。 |