知財高裁(令和2年)“発光装置事件4及び甲5には、いわゆる多数個同時生産方式によって製造される発光装置又は半導体装置において、基板のダイシング(切断)を行う部分にスリットを形成するという技術事項が開示されている。しかし、これらのスリットは、基板と樹脂との密着性を向上させるためのものではなく、専ら、当該基板を含めた装置全体の切断を容易にするために設けられたものであると認められ、切断後の装置の外側面に敢えて基板の一部(スリットが設けられていない部分)を残すように形成する必要性がなく、課題や作用の共通性がない。そうすると、引用発明2に甲4、甲5の技術を適用する動機付けがなく、よって、甲4又は甲5に接した当業者が、引用発明2において、装置の外側面に露出するリードフレームに、リードとして機能する部分を残しながら『切り欠き部』を設けることを容易に想起し得たものとは認められない」、「したがって、相違点2−2に係る本件訂正発明1の構成は、引用発明2に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない」、「原告は、甲4にはメタル基板(リードフレーム)にスリットを設けた態様のものが開示され、甲5にはダイシング位置に形成されたスリットにモールド樹脂を充填させることでダイシングソーが軟質なモールド樹脂を切断することとなる結果、基板(リードフレーム)に印加される応力の低減が図られる旨の教示があるとも主張する。なるほど、甲4及び甲5には、基板のダイシング(切断)を行う部分にスリットを形成するという技術事項が開示されているけれども、これらのスリットは、前記・・・・のとおり、切断後の装置の外側面に敢えて基板の一部(スリットが設けられていない部分)を残すように形成する必要性のないものである。そうすると、甲4又は甲5に接した当業者が、引用発明2において、装置の外側面に露出するリードフレームに、リードとして機能する部分を残しながら『切り欠き部』を設けることを容易に想起し得たとは認められない」、「よって、原告の主張は・・・・理由がない」と述べている。

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