東京地裁(令和2年6月11日)“競争ゲームのベット制御方法事件”は、「本件発明1−2は、オッズ指定ベットという機能に関する方法の発明であり、その規定文言に照らし、経時的要素のある発明というべきである(特許法2条3項2号参照)。そして、本件特許請求の範囲1−2の文言・・・・を、当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が理解する文言の一般的意義に照らして解釈すれば、その構成要件1−2Cのステップ(オッズの所望範囲を指定する複数のオッズ指定ボタンをプレイヤに提示するステップ)の後に、構成要件1−2Dのステップ(プレイヤによる前記複数のオッズ指定ボタンのいずれかへの操作を検出することにより、オッズの所望範囲を決定するステップ)がなされ、さらに、同ステップの後に、構成要件1−2Eのステップ(決定されたオッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性をオッズと共にプレイヤに提示するステップ)がなされ、さらに、同ステップの後に、構成要件1−2Fのステップ(プレイヤに提示した複数の着順可能性のすべてに対してベットする単一のベットボタンを表示するステップ)がなされるものであるということができる。そうすると、本件発明1−2においては、オッズの所望範囲の決定後、複数の着順可能性がプレイヤに対して提示され、その後にそのすべてに対してベットする単一のベットボタンを表示することが、その発明特定事項となっているものと解するのが相当である」、「この点について、スターホース3SeasonZ及びスターホース2FINALの構成については、・・・・オッズフィルターボタン(構成要件1−2C及び1−2Dの『オッズの所望範囲を指定する複数のオッズ指定ボタン』に当たる。)を選択し、オッズを一定の範囲に限定した操作の後についてみると、該当する馬連(決定されたオッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性)は、『オールベット』ボタンの選択の後に初めて表示されるものであって、『オールベット』ボタンの表示の際にプレイヤに提示されている構成のものではない。すなわち、スターホース3SeasonZ及びスターホース2FINALにおいては、上記馬連をプレイヤに提示して、その後に『オールベット』ボタンを表示するという構成(構成要件1−2E、1−2Fの構成)とはなっていないものであることが認められる。そうすると、スターホース3SeasonZ及びスターホース2FINALの各構成は、いずれも、構成要件1−2E、1−2Fの文言を充足しないというほかなく、また、その表示の際に該当する馬連がプレイヤに提示されていない『オールベット』ボタンが、『プレイヤに提示した複数の着順可能性のすべてに対してベットする単一のベットボタン』(構成要件1−2F)に当たるということもできないから、これを前提とする構成要件1−2G及び1−2Hの各文言もまた充足しないというほかない」、「この点、原告は、スターホース3SeasonZ及びスターホース2FINALのステップは、構成要件1−2C、1−2D、1−2F、1−2G、1−2H、1−2Eの順番に進行するが、この構成要件1−2Eのステップの後にキャンセルボタンを押すことで、オッズフィルターボタンを選択する前の画面・・・・に戻り、再度オッズフィルターボタン及びオールベットボタンを選択することで、その後、構成要件1−2F、1−2G、1−2Hの順にステップが進むことになるから、全体として見れば、本件発明1−2のとおりの順番でステップが進行しており、構成要件1−2Eないし1−2Hを充足すると主張する。そして、スターホース3SeasonZ及びスターホース2FINALにおいては、オールベットボタンを押し、選択したオッズの範囲の馬連が表示された後で、キャンセルボタンを押すことで、オッズフィルターボタンを選択する前の画面に戻り、再度オッズフィルターボタン及びオールベットボタンを選択することで、再び選択したオッズの範囲の馬連全てにベットされるものである・・・・。しかしながら、たとえこのことを前提としても、上記被告製品において、オールベット後に購入馬券一覧画面を表示させた場合、それで問題がないときには、そのままレースの開始を待てば足りるものであるから、ベットしたものをキャンセルする操作は、上記のベット自体をやめるか、ベットをする対象を変更するという事情があるときに行われるものというべきである。そうすると、上記被告製品において、いったんオールベットを選択しておきながら、それをキャンセルし、その後にまた全く同一のベットを繰り返すというような原告が主張する上記操作は、上記被告製品において通常想定される操作とは言い難いものであって、そのような通常想定されない操作をもって、上記被告製品の構成であると認めることはできないというべきであるから、これを前提に、上記被告製品が構成要件1−2Eないし1−2Hを充足するとの原告の上記主張は、その前提を欠き、理由がないものである。したがって、原告の上記主張は採用することができない」と述べている。 |