東京地裁(令和2年8月26日)“ディスク記録装置事件”は、「原告の職務内容、CD−Rの開発経緯、本件各発明の経緯等は、・・・・@原告は、入社以来、音楽用CDのエラー訂正技術、CDプレーヤーの信号処理LSI、CD−ROM、光磁気ディスク等の研究、開発に従事し、CDに関する専門的知識、経験を有していた者であり、本件各発明は、そのような原告の専門的知識、経験に基づき、ほぼ全ての構成を原告において着想したものであること、A被告は、当時、CD−MOの開発に取り組んでおり、CD−Rの開発のための部署を設けていなかったほか、D社長ら役員が反対していたこともあって、CD−Rを開発するための研究施設や設備を提供することはなく、そのための予算を組むこともなかったものであり、本件各発明に至るまで、原告に対してそのための研究施設及び設備を提供することはなく、特別な手当てを付与することもなかったことなどに照らせば、経営会議においてCD−Rの追記が事業化に当たり課題になる旨指摘したことが本件各発明の契機となったとみる余地があるとしても、本件各発明に至る経緯において、被告の使用者としての貢献が大きいものであったとはいい難い。他方で、・・・・CD−R製品の発売当初は互換性が十分でなかったことも一因となり、売上げが大きくは増加しなかったものの、・・・・B被告は、フィリップス社と共に、CD−R規格及びCD−RW規格を策定してこれらを発表するとともに、Cオレンジ研究会及びオレンジフォーラムの構成企業として、互換性を確保するための活動にも携わっており、また、Dライセンスを求める全ての企業にライセンスを認めることを原則とするフィリップス社のライセンスポリシーに従い、本件各特許を必須特許として実施許諾の対象としていたものであって、それらにより、CD−R/RW製品の世界的な普及、売上げ及びライセンス収入の増加に大きく寄与したというべきであるから、CD−R/RW製品の売上げ又はライセンス収入に対する被告の使用者としての貢献は極めて大きいということができる。以上を総合すると、本件各発明についての被告の使用者としての貢献度は95%と認めるのが相当である」と述べている。 |