知財高裁(令和2年)“メタルマスク事件甲1文献においては、めっき法を採用するのが好ましいとされている一方で、甲3文献においては、甲3記載技術である電解マーキング法について、電解めっき法に劣るマーキング方法であると否定的な評価がされているのであるから、甲1文献及び甲3文献に接した当業者が、敢えてめっき法とは異なる甲3記載技術を甲1発明に適用しようとすることは考え難いというべきである」、「また、・・・・甲1発明においては、アライメントマークの耐久性や識別性等の向上がその目的とされているといえるのに対し、・・・・甲3文献においては、甲3記載技術について『得られるマーキング皮膜は・・・・安定した黒色皮膜を得ることが困難であり、皮膜の退色、離脱、溶出等の問題がある(欠(1))、『明瞭さに欠ける(欠(4)など、上記の甲1発明の目的を達することを阻害する欠点が存在する旨が記載されている」、「以上の各事情を考慮すると、甲3記載技術を甲1発明に適用することについては、阻害要因があるというべきである」、「原告は、欠(1ない(4につき、甲3記載技術を甲1発明に適用することの阻害要因とはなり得ないなどと主張する。しかしながら、・・・・甲3文献の記載内容によれば、欠(1ない(4は、電解マーキング法一般を念頭に置いた欠点を列挙したものと読むことができるのであって、そうであれば、同文献に接した当業者が、電解めっき法に劣るマーキング方法であると否定的に評価されている甲3記載技術を、電解めっき法を採用するのが好ましいとされている甲1発明に敢えて適用しようとすることは考え難いというべきである。また、欠(1ない(4につき、本件出願時の時点において既に克服された欠点であることが技術常識又は周知の事項であったと認めるに足りる証拠は存しない。したがって、欠(1ない(4は、甲3記載技術を甲1発明に適用することについての阻害要因となり得るというべきである」と述べている。

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