知財高裁(令和2年)“空気分離方法事件本件各発明に係る『空気分離方法』のための『空気分離装置』は、2種以上の純度の酸素を取り出すものであり、そのうち1種を低純度のガス酸素で取り出すことによって、低圧精留塔内の主凝縮器に必要な酸素の純度を低減でき、その結果、空気圧縮機の吐出圧の低減を図り、該圧縮機の消費動力を低減し『空気分離装置』の稼動コストを従来よりも小さくすることができるものである」、「本件各発明において用いられる装置は『空気圧縮機』、『吸着器』、『主熱交換器』、『高圧精留塔』、『低圧精留塔』、『低圧精留塔』内に設けられた『主凝縮器』、『昇圧圧縮機』、『液酸ポンプ』、『空気凝縮器容器』及び『空気凝縮器容器』内に設けられた『空気凝縮器』を主として備える『空気分離装置』であり、それぞれの意味するところは、図面をもって具体的に示されている・・・・。工程についても、@『低圧精留塔』内で精留分離された液体酸素が『空気凝縮器容器』内に供給され『空気凝縮器容器』内で気化したガス酸素(低純度酸素)が、供給ライン(ガス酸素供給ライン)により『主熱交換器』に送られて常温に戻された後、必要に応じて空気が混合されて酸素富化燃焼用酸素として外部(酸素富化炉)に供給されること・・・・、A『空気凝縮器容器』内の液体酸素は、供給ラインにより『液酸ポンプ』に送られて必要圧に昇圧された後『主熱交換器』で蒸発及び昇温されることによりガス酸素(高純度酸素)となり、酸化用酸素として外部(酸化炉)に供給されること・・・・、B『空気凝縮器容器』内の液体酸素(高純度酸素)の抜き出し量は、例えば0%〜0%の間とすること・・・・、以上のことが、具体的に示されている。そして、以上のような『空気分離装置』によれば、必要とされる高純度酸素が全体の酸素の一部である場合に、必要とされる高純度酸素の純度を確保しつつ『低圧精留塔』の『主凝縮器』から取り出す液体酸素の純度を低減し、低減分の酸素の沸点を下げることが可能となり、また『低圧精留塔』内で液体酸素とガス窒素との間で行われる熱交換の温度差を大きくすることにより『高圧精留塔』内の必要圧力を下げることができ、これにより『空気圧縮機』の吐圧力を低減し、ひいては該圧縮機の消費動力の低減が可能となるので『空気分離装置』の稼動コストを従来よりも抑えることができるとして、効果及びその機序の説明もされている」、「本件明細書の発明の詳細な説明には、前記・・・・のことがその具体的な実施の形態も含めて記載されており、当業者は、これをみれば、過度の試行錯誤を要することなく、本件各発明を実施することができる。よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合する」と述べている。

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