東京地裁(令和2年)“オルニチン及びエクオールを含有する発酵物の製造方法事件被告らは、構成要件Bの『オルニチン産生能力及びエクオール産生能力を有する微生物で発酵処理することを含む』とは、いわゆる機能的クレームとして広範な微生物を包含する記載であるのに対し、本件明細書には、ラクトコッカス0−2を適切なものとして発見した点に基本的な技術思想があることが記載され、あらゆる微生物を含むものとして記載されておらず、また、原告のホームページ・・・・をみても、ラクトコッカス0−2以外の上記微生物を見出すためには過度の試行錯誤を有するというべきであることなどを指摘して、構成要件Bの『微生物』は、ラクトコッカス0−2に限定して解釈されるべきである旨主張する。しかし、・・・・本件明細書の記載等に接した当業者においては、公知のスクリーニング方法を用いて、通常の試行錯誤の範囲内において、ラクトコッカス0−2以外についても『オルニチン産生能力及びエクオール産生能力』を有する微生物を見出し得る旨理解するというべきであるから、本件明細書において、ラクトコッカス0−2を適切なものとして発見した点のみに基本的な技術思想があることが記載されているとはいえない。さらに、原告のホームページ・・・・をみても、実際に市販できる程度に優れた微生物を見出すことには困難が伴うとしても、構成要件Bの『微生物』は、本件特許請求の範囲及び本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らし、上記のような程度に優れた微生物である必要はなく、ある程度『オルニチン産生能力及びエクオール産生能力』を有する微生物であれば足りるというべきであるから、当業者に過度の試行錯誤を課することにもならない。以上によれば、被告らの上記主張は、採用することができない」と述べている。

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