東京地裁(令和3年)“ウェブページ閲覧方法事件原告は、あどえりあ社を通じて、本件特許に係るライセンス(通常実施権の許諾。以下『本件ライセンス』という)を行っている」、「本件ライセンスの料金体系は、@多数のウェブサイトやアプリ等に一括で広告を配信するアドネットワーク事業を行う企業を対象とするアドネットワーク事業社用・・・・、Aクライアントに対しシステム等を使ってサービスを提供する企業を対象とするサービス提供事業社用・・・・、B自社でウェブサイトを運営する企業を対象とするウェブサイト運営社用・・・・の3種類がある」、「上記@(アドネットワーク事業社用)の料金は、登録料1万円(初年度のみ)と、アドネットワーク事業社のクライアントに対する広告請求金額に対する1.5%(親会社の業務を子会社が行う場合は3%)の割合によるライセンス利用料である。上記A(サービス提供事業社用)の料金は、クライアントの特許利用も含めたライセンスを受ける場合は、登録料1万円(毎年)と、サービス提供事業社と各クライアントの間の月額契約料金の3%の割合によるライセンス利用料である。上記B(ウェブサイト運営社用)の料金は、当該ウェブサイトが5000万PV以上で、かつ、自社サイト内の広告の地域ターゲティングを行う場合は、登録料1万円(初年度のみ)及び基本利用料0万円(年額)に加え、広告売上げの3%の割合によるライセンス利用料となる」、「本件ライセンスの実績としては、アドネットワーク事業社用のライセ ンス利用料につき1.5%で契約した例、サービス提供事業社用のライセンス利用料につき3%で契約した例、ウェブサイト運営社用のライセンス利用料につき1.5%で契約した例や、0.5%で契約した例がある」、「被告の地域ターゲティング広告が本件ライセンスのいずれの類型に属するかにつきみるに、YDN(サイト注:Yahoo! ディスプレイアドネットワーク)のうち被告ウェブサイト(サイト注:Yahoo! JAPAN)に広告を掲載する部分及びプレミアム広告(サイト注:Yahoo! プレミアム広告)はウェブサイト運営社用に当たるから、ライセンス料率は3%となり、YDNのうち他の提携ウェブサイトに広告を掲載する部分はアドネットワーク事業社用に当たるから、ライセンス料率は1.5%となるものと認められる。この点につき、被告は、過去にウェブサイト運営社用に当たるにもかかわらず0.5%や1.5%のライセンス料率が適用されたことがあることを指摘し、本件においてもこれらの料率を参考とすべきであると主張するが、・・・・これらは原告とライセンシーとの関係に基づき特別に減額されたものであることがうかがわれ、他にサービス提供事業社用の類型ではあるものの、原則どおりライセンス料率を3%として契約した実績もあることからすれば、上記のとおり認定するのが相当である」、「被告は、被告自身の多数の特許を実施することによりウェブ広告の分野において大きなシェアを獲得することができているのであるから、本件各発明の相当実施料率の算定に当たってもこの点を考慮すべきであると主張するが、被告がウェブ広告の分野において多数の特許を実施していることやそれが売上げに寄与していることは、本件特許の相当実施料率を算定すべき上で考慮すべき事情ということはできない」、「被告は、YDNのクリック数や売上げは、被告が長年にわたり多大な労力を積み上げてきたサービスの圧倒的な利用者数及びアクセス数を前提とするものであり、これらは本件各発明と無関係であるから、本件特許の相当実施料率の算定に当たってはこの点を考慮すべきであると主張する。しかし、YDNの売上げにおいて、被告の提供するサービスの利用者数や被告のウェブサイトへのアクセス数が影響を与えたとしても、本件各発明の売上げ及び利益への貢献の程度という観点からみると、本件各発明は、IPアドレス対地域データベースを使用して、アクセスポイントの属する地域を判別することを通じて、地域によって異なるウェブ情報をユーザ端末に送信することを可能にするものであるから、エリアターゲティング広告に必要不可欠なものであり、本件各発明と同程度に簡易かつ効果的に地域判別をし得る代替技術の存在を示す証拠のないことに照らすと、本件各発明を利用することができない場合には、被告のYDNやプレミアム広告の利用者に対する訴求力は大幅に減殺されたものというべきである。このような本件各発明のYDN及びプレミアム広告の提供サービスにおける必要不可欠性や売上げや利益に対する貢献度に照らすと、YDNの売上げにおいて、被告の提供するサービスの利用者数や被告のウェブサイトへのアクセス数が影響を与えたとしても、これをもって、適用すべき実施料率を下げることが相当であるということはできない」、「以上によれば、本件各発明の実施についての相当な実施料率は、YDNのうち被告ウェブサイトに広告を掲載する部分及びプレミアム広告につき3%、YDNのうち他の提携ウェブサイトに広告を掲載する部分は1.5%と認めるのが相当である」と述べている。

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