東京地裁(令和3年10月29日)“グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材事件”は、「本件特許出願前から、被告伊藤は、本件発明1の技術的範囲に属する被告製品A1ないし3及び本件各発明の技術的範囲に属する被告製品A4ないし11を、被告西村は、本件各発明の技術的範囲に属する被告製品B1及び本件発明1の技術的範囲に属する被告製品B2を、日本黒鉛らは、本件各発明の技術的範囲に属する日本黒鉛製品1ないし3並びに本件発明1の技術的範囲に属する日本黒鉛製品4及び5を、中越黒鉛は、本件発明1の技術的範囲に属する中越黒鉛製品1及び2並びに本件各発明の技術的範囲に属する中越黒鉛製品3をそれぞれ製造販売していたものである。そして、・・・・本件特許出願当時、当業者は、物質の結晶構造を解明するためにX線回折法による測定をし、これにより得られた回折プロファイルを解析することによって、ピークの面積(積分強度)を算出することは可能であったから、上記製品を購入した当業者は、これを分析及び解析することにより、本件各発明の内容を知ることができたと認めるのが相当である。したがって、本件各発明は、その特許出願前に日本国内において公然実施をされたものである」、「原告は、第三者において、被告ら、日本黒鉛ら及び中越黒鉛から本件各発明を実施した製品を取得したとしても、本件各発明の構成ないし組成を知り得なかったと主張する。しかし、前記・・・・のとおり、本件特許出願当時、当業者は、物質の結晶構造を解明するためにX線回折法による測定をし、これにより得られた回折プロファイルを解析することによって、ピークの面積(積分強度)を算出していた。このような分析を外部の専門機関に依頼するのに、費用や労力、時間がかかることは、本件各発明が公然と実施されていたことの認定判断の妨げになるものとは認められない。したがって、原告の上記主張は採用することができない」と述べている。 |