東京地裁(令和3年11月11日)“画像形成装置事件”は、「分割出願が適法な場合には、その効果は原出願の出願日に遡及する(特許法44条2項本文)が、分割出願が不適法な場合には、分割出願をした時点を基準として実体審査が行われることになる。そして、分割出願の出願日が原出願の出願日へ遡及するためには、@分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること、及び、A分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であることを要するものと解するのが相当である。なお、原出願の明細書等について補正をすることができる時期に特許出願の分割がされた場合には、上記@の要件が満たされれば、上記Aの要件も満たされるものと解されるところ、本件出願2は、本件出願1について特許査定の謄本の送達がされた平成26年10月7日・・・・より後の平成26年11月4日に分割出願がされており・・・・、本件出願1の明細書等について補正をすることができる時期(特許法17条の2第1項参照)にされたものではないことからすれば、本件出願2の分割要件としては上記@の要件とは別に、上記Aの要件を満たすことも必要となると解される」、「本件出願2分割時明細書は、本件出願1査定時明細書には存在しない記載事項を含むものであるから、本件出願1査定時明細書に記載された事項の範囲内であるとはいえないというほかない。そうすると、本件出願2は、上記・・・・Aの分割要件を満たさないから、分割要件違反となるものというべきであり、本件出願2には特許法44条2項の適用がない」、「以上によれば、本件特許出願(サイト注:曾孫出願)が本件出願3(サイト注:孫出願)に対して分割要件を満たし、本件出願3が本件出願2(サイト注:子出願)に対して分割要件を満たすとしても、本件出願2は本件出願1(サイト注:親出願)に対して分割要件を満たしていないから、本件出願2の出願日は、本件出願1の出願日まで遡及せず、現実の出願日である平成26年11月4日であることとなり、同様に、本件特許出願の遡及する出願日は、本件出願2の出願日である平成26年11月4日であることとなる」と述べている。 |