知財高裁(令和3年)“裏刷り用溶剤型グラビア印刷インキ組成物の製造方法事件「相違点2に係る本件発明1の構成は、ポリウレタンウレア樹脂の原料である二塩基酸としてバイオマス由来のセバシン酸を用いること、印刷塗膜中のバイオマス度を3〜0質量%とすることであるところ、・・・・甲1発明1は、低温安定性が良好であり、ノントルエン系の溶剤系における印刷適性、ラミネート強度、耐ブロッキング性及びレトルト適性の印刷物性がいずれも良好なポリウレタンウレア樹脂組成物の提供を課題とした、グリコールと二塩基酸との反応からなるポリエステルポリオールを含有するポリウレタンウレア樹脂組成物に関する発明であるといえるが、甲1文献には、ポリウレタンウレア樹脂組成物の原料をバイオマス由来のものとすることを直接的に示唆又は開示する記載は存しない」、「しかしながら、・・・・平成4年に政府の主導でバイオマスプラスチックの利用促進に向けた基本的な考え方が示されて以降、地球温暖化防止等の観点から、プラスチックや樹脂製品等の原料としてバイオマスを使用することが促進されるようになったこと、平成8年8月1日からはバイオマスを利用していると認定された製品にバイオマスマークを付す施策が開始され、平成4年8月1日からはその認定基準であるバイオマス度の下限値が0質量%とされたこと、バイオマスマークが付される対象となる製品には印刷インキも含まれることが認められ、これらの事情からすれば、本件優先日当時、印刷インキの技術分野においても、製品のバイオマス度を0質量%以上に高めることが一般的な課題とされていたといえる」、「また、・・・・セバシン酸は、本件優先日当時、バイオマス由来のものが一般に知られていたことが認められる上、甲2文献には、印刷インキ等に用いるポリエステル樹脂の原料としてセバシン酸が挙げられ、セバシン酸は植物由来のものの入手が比較的容易である旨が記載されていること・・・・、甲3文献には、印刷インキ等に用いるバイオポリウレタン樹脂の原料として植物由来のセバシン酸が挙げられ、セバシン酸はヒマシ油から生成される旨が記載されていること・・・・からすれば、本件優先日当時、印刷インキの技術分野において、樹脂の原料としてバイオマス由来のセバシン酸を用いることは、周知技術であったといえる」、「甲1文献に接した本件優先日時点における当業者は、甲1発明1のポリウレタンウレア樹脂の原料である二塩基酸としてバイオマス由来のセバシン酸を用い、同樹脂組成物のバイオマス度を0質量%以上に高めることを動機付けられるものといえるから、相違点2に係る本件発明1の構成を容易に想到し得たものと認められる」と述べている。

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