知財高裁(令和3年)“チャイルドセーフティシート事件「発明の要旨認定は、特許請求の範囲の記載に基づいて行うべきであり、発明が属する技術分野における優先日前の技術常識を考慮した通常の意味内容により特許請求の範囲の記載を解釈するのが相当である。もっとも、特許請求の範囲の記載の意味内容が、明細書又は図面において、通常の意味内容とは異なるものとして定義又は説明されていれば、通常の意味内容とは異なるものとして解される余地はあるものの、そのような定義又は説明がない場合には、上記のとおり解釈するのが相当である」、「被告は、本件発明の『シートシェル』の解釈について『背部側から支持部を構造的に保持するシェル(外殻)的構造要素である』、『支持部とは別個のシェル形状の一構成要素であり、子供を前部側で支持する支持部の背部側を外側から構造的に保持する、支持部のためのシェル(外殻)的構造要素であって、車両の側部から伝わる横からの力がシートシェルに導かれるように側面衝突保護部を配置したシェルである』、『シートシェルは、シートシェルの内側にある支持部の背部側を外側から構造的に保持し、かつ側面衝突保護部を取り付けるのに必要とされる程度に剛性・・・・を備えるシェル形状部材である』、『シートシェルはその背部側が露出しており、シェルの名のとおり曲面形状である』などと主張する・・・・。確かに、本件図面の図2、5及び6に、シートの背部に曲面形状の構造が示されているようにも見え、実施例において、それがシートシェルに該当するとされている。しかし、本件明細書には、本件発明のシートシェルを、被告が主張するような外殻的構造の意味に限定して解釈すべき根拠となるような記載はなく、シートシェルという用語の解釈に当たって、本件発明が属する技術分野における優先日前の技術常識を考慮した通常の意味内容とは異なるように解釈すべきことを裏付ける根拠もないから、被告の上記主張は採用することができない」と述べている。

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