東京地裁(令和3年12月24日)“鎮痛剤事件”は、「本件明細書の発明の詳細な説明においては、ホルマリン試験、カラゲニン試験及び術後疼痛試験の各薬理データの記載により、本件化合物が侵害受容性疼痛に分類される痛みに対して鎮痛効果があること及びそのための当該医薬の有効量が裏付けられているものの、本件発明1及び2がその内容とする『痛み』、すなわち、少なくとも『炎症性疼痛、術後疼痛、転移癌に伴う骨関節炎の痛み、三叉神経痛、急性疱疹性および治療後神経痛、糖尿病性神経障害、カウザルギー、上腕神経叢捻除、後頭部神経痛、反射交感神経ジストロフィー、線維筋痛症、痛風、幻想肢痛、火傷痛ならびに他の形態の神経痛、神経障害および特発性疼痛症候群』・・・・の各痛みに対して鎮痛効果があること及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載がない」、「本件明細書の記載・・・・によれば、本件発明1及び2は、少なくとも上記各痛みに対して、市場にある鎮痛剤、例えば、麻薬性鎮痛剤やNSAIDでは不十分な効果しか得られず、また、これらの鎮痛剤には副作用があるため、不完全な処置しか行われていなかったことから、上記各痛みに対する鎮痛効果が高く、副作用の少ない鎮痛剤を提供することを課題とし、この課題を解決しようとしたものであると認められる。しかし、前記・・・・のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件化合物について、上記各痛みのうち、侵害受容性疼痛に分類される痛みに対して鎮痛効果があることの記載はあるものの、その余の痛みに対して鎮痛効果があることについての記載があるとは認められない。したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件発明1及び2の上記課題の解決、すなわち少なくとも上記各痛みの全てに対して鎮痛効果を有することを認識できる範囲のものとはいえず、また、当業者が本件出願当時の技術常識に照らして上記各痛みに対して鎮痛効果を有することを認識できる範囲のものともいえないから、本件発明1及び2は、サポート要件に違反する」と述べている。 |