知財高裁(令和3年2月16日)“屋根煙突貫通部の施工方法事件”は、「当裁判所も、本件各発明に係る特許出願(サイト注:平成19年10月19日)より前である平成19年6月28日に公然と実施されたA邸工事(サイト注:T期工事)は、本件発明1及び3の構成要件を全て充足するから、本件発明1及び3は新規性を欠き、また、A邸工事は、アルミフラッシングの四角形状の固定板の軒側縁部分に防水テープが貼付されていない点で本件発明2及び本件発明4と相違するが、当業者は、同部分にも防水テープを貼付する構成に容易に想到し得るといえるから、本件発明2及び本件発明4は進歩性を欠くものと判断する」、「控訴人は、A邸は塀や草木に囲まれており、容易に外部からA邸をのぞき見ることはできないこと、山に囲まれており、近隣の住民もわずかであること、作業が屋根上で行われるものであり、外部から容易にその作業の内容を確認することができないことから、A邸工事は、公然と行われたものとはいえないと主張する。しかし、被控訴人のために発明の内容を秘密にする義務を負わない不特定の者によって技術的に理解されるか、そのおそれのある状況で実施されたのであれば、工事は公然と行われたと評価するのが相当であるところ、本件においては、まず、A邸の屋根からストーブの煙突が突出している側(煙突の正面側)の隣地は、本件工事の当時には駐車場であり・・・・、同駐車場には10台を優に超える駐車スペースがあり、敷地もA邸より高いことが認められるのであって・・・・、同駐車場からは煙突についても十分視認が可能であるし、当該工事が第三者から視認されること等を拒むような態様で行われていたことはうかがえない。また、乙12の資料4は、・・・・平成19年7月2日に被告から住友林業に提出されたものであるところ、同図面にはインナーフラッシング(サイト注:アルミフラッシング)が明記されており、これが、住友林業からニシカネにファックスで転送されている・・・・。そして、・・・・住友林業の下請業者であるニシカネがA邸の煙突について不燃材の装着(サイト注:U期工事)を行うことになっていたが、その時点では、煙突の屋内からの引き出し及び立ち上げ部分はまだ設置されておらず、住友林業又はニシカネにおいて煙突の屋根貫通部の構造を認識することは十分可能であったといえるところ、A邸工事の施工方法及び防水構造は、・・・・いずれも複雑なものではなく、当業者であれば、乙12の資料4や、U期工事時(サイト注:平成19年10月3日)の煙突の屋根貫通部の構造から、これらの発明を技術的に理解できるものと認められる。以上によれば、A邸工事は、本件特許出願前に、被控訴人のために発明の内容を秘密にする義務を負わない不特定の者(少なくとも上記住友林業やニシカネ等の下請業者等)によって技術的に理解されるか、そのおそれのある状況で実施されたもので、公然実施された発明に当たるというべきであるから、控訴人の主張は採用できない」と述べている。 |