大阪地裁(令和3年2月18日)“手摺の取付方法事件”は、「消費税は、国内において事業者が行った資産の譲渡等に課されるものであるところ(消費税法4条1項)、『例えば、次に掲げる損害賠償金のように、その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に該当することに留意する。・・・・(2)無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金』(消費税法基本通達5−2−5)とされていることに鑑みると、特許権を侵害された者が特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金を侵害者から受領した場合、その損害賠償金も消費税の課税対象となるものと推察される。そうすると、特許権者が特許権侵害による損害のてん補を受けるためには、課税されるであろう消費税額相当分についても損害として受領し得る必要があるというべきであるから、『利益』には消費税額相当分も含まれ得ると解される。適用されるべき消費税率について、原告は、損害賠償支払時点の税率(10%)によるべきと主張する。しかし、上記のとおり、特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金に対する消費税が課せられるのは、損害賠償金の実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められることによる。ここで、資産の譲渡等に相当する行為と見られるのは、特許権侵害行為である。また、消費税基本通達9−1−21では、『工業所有権等又はノウハウを他の者に使用させたことにより支払いを受ける使用料の額を対価とする資産の譲渡等の時期は、その額が確定した日とする。』とされている。これらのことに鑑みると、特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金は、特許権侵害行為時に直ちに損害が発生して金額が確定するものであるから、資産の譲渡等の時期は、特許権侵害行為時であると解される。そうすると、本件においては、第1期間〜第4期間のいずれにおいても、本件特許権侵害行為時の消費税率8%が適用されることとなる」と述べている。 |