大阪地裁(令和3年2月18日)“手摺の取付方法事件”は、「本件発明の効果は、@外観上の体裁の良さ及び室内側への風雨の進入防止並びにA取付強度の高さ及び風圧に対する耐久性の良さと、B取付作業時に足場等が不要となることによる施工コストの低減にあるといえる」、「本件発明は、施工コスト低減という効果(B)によりこれを実施する製品の販売等に貢献するものであって、相応の顧客誘引力を有するといえるものの、その程度は限られているというべきである。また、効果@及びAに関しては、本件発明は、手摺本体の取付け完了後の外観上の体裁及び取付強度の点で同程度の他の製品に対する優位をもたらすほどの貢献をするものとはいえない」、「乙27製品等は、いずれも、手摺本体の室外側長手方向略全域に連続して複数のガラス板が取り付けられ、ガラス板間にはアルミ製目地枠を用いているものと認められる。これにより、これらの製品は、本件発明の効果@と同様の効果を奏するものといえる」、「乙27製品等は、いずれも、ガラス板間の目地材としてアルミ製目地枠(縦枠、竪枠)を用い、ガラス取付枠とアルミ製目地枠とでガラス板の上下左右を係合保持しているものと認められる・・・・。これにより、これらの製品は、本件発明の効果Aと同様の効果を奏するものといえる」、「乙27製品等は、いずれも、ガラス板とアルミ製目地枠を室内側から取り付けることが可能であり、ガラス板とアルミ製目地枠を室外側に取り付ける作業のために足場を組む必要はないものと認められる。これにより、これらの製品は、本件発明の効果Bと同様の効果を奏するものといえる」、「乙27製品等は、いずれも、本件発明の効果と同様の効果を有する製品として、原告製品及び被告製品と市場において競合するものと見るのが相当である。もっとも、原告は、原告製品を遅くとも平成24年3月までには販売していると認められる・・・・。他方、・・・・乙27製品等の販売開始時期は、乙31製品が平成24年、乙27製品が平成26年、乙30製品が平成27年、乙29製品が平成28年3月、乙39製品が平成29年10月であることが認められる。また、原告製品、被告製品及び乙27製品等の各売上額やアルミ製目地枠のフラットレール製品市場におけるシェアは、いずれも証拠上明らかでない。これらの事情を総合的に考慮すると、アルミ製手摺製品の市場において原告製品及び被告製品に対する複数の競合品が存在することに鑑みれば、特許法102条2項に基づく損害額の推定覆滅事由としてこれを考慮すべきではあるものの、被告による主張立証の程度に鑑みれば、その程度は相当に限られると見るべきである」、「以上の事情を総合的に考慮すれば、被告製品の売上に対する本件発明の貢献の程度は限られるものの、他方で、競合品の存在による推定覆滅の程度も相当に限定的であり、他に推定を覆滅すべき具体的な事情も見当たらないことから、本件においては、2割の限度で損害額の推定が覆滅されるものとするのが相当である」と述べている。 |