東京地裁(令和3年3月10日)“真空洗浄装置事件”は、「被告は、当業者は、本件明細書等の記載に接したとしても、洗浄室を凝縮室と連通させることによりワークを乾燥するメカニズムを理解することができないと主張する。しかし、本件明細書等・・・・には、溶剤蒸気が充満した高温の洗浄室と低温の凝縮室と連通させることによって、洗浄室内の蒸気が凝縮室に移動及び凝縮し、これにより洗浄室内が減圧されて、ワークに付着した溶剤が全て気化して乾燥が行われることが記載されている。当業者であれば、上記記載から、洗浄室と凝縮室を連通することにより、ワークの乾燥が行われるメカニズムを容易に理解することができる。これに加えて、同明細書等・・・・の記載を参酌すれば、当業者は、一連の具体的な処理工程や試験データ等を把握することができるから、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明2を実施することができるというべきである」、「被告は、本件明細書等には、真空乾燥実験の実験条件が明示されていないため、当業者は、その実験を再現することができないと主張する。しかし、前記のとおり、当業者は、洗浄室と凝縮室を連通することによりワークの乾燥が行われるメカニズムを容易に理解することができるので、真空ポンプや圧力計の種類やスペック、単位換算の方法などの実験条件は、適宜設定し得る。そうすると、本件明細書等に更に詳細な実験条件等が記載されていないとしても、当業者であれば、過度の試行錯誤を重ねることなく、本件発明2を実施できるというべきである」、「したがって、本件明細書等の記載が実施可能要件に違反するとの被告の主張は理由がない」と述べている。 |