東京地裁(令和3年3月10日)“真空洗浄装置事件”は、「本件特許権2は、真空洗浄装置の乾燥工程に関するものである。真空洗浄装置は、本件明細書等・・・・にも記載があるとおり、準備工程、搬入工程、洗浄工程、乾燥工程、搬出工程などを経て一連の作業が行われる。このうち、乾燥工程も重要な役割を担うものの、真空洗浄装置の主たる目的はワークを洗浄することにあるので、被告製品全体において本件特許の寄与する割合はその一部にとどまるということができる。また、顧客が真空洗浄機を購入するに当たっても、所望のワークを洗浄し得るかという点に大きな関心を有すると考えられ、本件発明2による急速乾燥の効果が顧客誘引力に与える程度は、洗浄能力に比べると小さいというべきである」、「平成27年3月期における真空洗浄装置の市場占有率は、不二越52.5%、原告25.0%、アクア化学株式会社7.5%、株式会社クリンビー4.5%、被告4.5%であったと認められる。他方で、例えば、市場シェアが首位の不二越は『浸漬あり(洗浄室内の洗浄湯に製品を浸して洗う)』のタイプの製品に強いのに対し、原告及び被告は、いずれも『浸漬なし(蒸気やシャワーなどを利用して洗う)』のタイプの製品の開発・販売にも注力していたものと認められる・・・・。 実際のところ、被告製品は『浸漬なし』のタイプに属し、容量の大きい15L型真空弁及び水冷バッフルを用いることにより急速な乾燥を可能にするものであると認められ、被告製品の製品案内・・・・にも『製品を急速乾燥する。従来の乾燥時間の10分を1〜2分へ大幅に短縮』などの記載があり、洗浄性能等を強調する他社の製品案内・・・・と比較すると、原告製品・・・・と同様、急速乾燥をメリットとして顧客にアピールする製品であったと認められる。そうすると、本件特許権2の侵害行為がなければ、被告製品の顧客の一定の割合が原告ではなく、競合他社から真空洗浄装置を購入したとしても、被告製品が『浸漬なし』のタイプに属し、急速乾燥の実現を特徴としていることに照らすと、原告製品の被告製品に対する代替性は競合他社に比べて高いというべきである」、「以上の事情を総合考慮すれば、特許法102条2項による・・・・損害の推定は、5割の限度で覆滅されるというべきである」と述べている。 |