大阪地裁(令和3年3月25日)“学習用具事件”は、「原告は、組画の逐次又は一斉の表示をして記憶する人の『作業』となる部分を削除しつつ、組画の表示を構成要件B2の選択手段に限定して、明確性の欠如に係る拒絶理由を補正すると共に、『組画を逐次又は一斉に表示して』とする構成を削除し、かつ、『一の組画の画像データを選択する画像選択手段』を付加したという本件補正の経緯から、被告は、特許請求の範囲につき、『一の組画の画像データを選択する画像選択手段』に客観的、外形的に限定し、これを備えない発明を本件発明の技術的範囲から意識的に除外したなどと主張する。しかし、本件通知書及び本件意見書の各記載を踏まえると、『それぞれの前記記憶対象に対応する前記組画を逐次又は一斉に表示して前記記憶対象を記憶する』のは人間が行う作業であって、物の発明としての『学習用具』の構成をなしていないなどといった明確性要件に係る本件通知書の指摘に対し、被告は、本件補正において、作業の主体につき、画像選択手段、画像表示手段、音声選択手段、音声再生手段といった『手段』とし、人が行う作業を示す部分を削除することで、これらの手段を含むコンピューターであることを明確にしたものと理解される。それと共に、進歩性に係る本件通知書の指摘に対しては、上記のように作業の主体を明確にしたことに加え、組画記録媒体に記録される画像データを、『1又は複数種の記憶対象から成る記憶対象群に含まれる個別の記憶対象を表現する原画及び該原画に関連する関連事項又は関連像を表現する1又は複数種の関連画から成る組画の画像』(当初の請求項1)から『原画、該原画の輪郭に似た若しくは該原画を連想させる輪郭を有し対応する語句が存在する第一の関連画、並びに、該原画及び第一の関連画に似た若しくは該原画及び第一の関連画を連想させる輪郭を有し対応する語句が存在する第二の関連画、から成る組画の画像データ』に限定すると共に、画像表示手段が第一の関連画、第二の関連画、及び原画をその順に表示することとし、さらに、その表示を、これらに対応する語句の再生と同期させることとして、情報の提示方法を限定したものである。このような出願経過を客観的、外形的に見ると、被告は、本件補正により、人為的作業を示す部分としての『逐次又は一斉に表示』という行為態様は意識的に除外しているものの、物及び方法の構成として、逐次又は一斉に表示する構成を一般的に除外する旨を表示したとはいえない。また、『一の組画の画像データを選択する画像選択手段』との構成を付加した点は、本件明細書に『一の組画』の画像データの選択、表示を念頭に置いた記載があることを踏まえたものと理解されるものの・・・・、これをもって直ちに、客観的、外形的に見て、複数の組画を選択する構成を意識的に除外する旨を表示したものとは見られない。そうすると、原告指摘に係る本件補正の経緯をもって、被告は、特許請求の範囲につき、『一の組画の画像データを選択する画像選択手段』に客観的、外形的に限定し、これを備えない発明を本件発明の技術的範囲から意識的に除外したと見ることはできない。この点に関する原告の主張は採用できない」、「以上より、原告製品を使用したコンピューターは、均等の第5要件を充足する」と述べている。 |