知財高裁(令和3年)“止痒剤事件特許権の存続期間の延長登録の制度は、政令処分を受けることが必要であったために特許発明の実施をすることができなかった期間を回復することを目的とするものであるから、本件発明の実施に本件処分を受けることが必要であったかどうかは、このような特許法の存続期間延長の制度が設けられている趣旨に照らして判断されるべきであり、その場合における本件処分の内容の認定についても、このような観点から実質的に判断されるべきであって、承認書の『有効成分』の記載内容から形式的に判断すべきではない。このように解することは、最高裁平成・・・7年1月7日・・・・判決・・・・の趣旨にも沿うものということができる」、本件処分の対象となった本件医薬品の有効成分は、先行処分1に係る製造販売承認書に記載された『ナルフラフィン塩酸塩』と形式的に決するのではなく、実質的には、本件医薬品の承認審査において、効能、効果を生ぜしめる成分として着目されていたフリー体の『ナルフラフィン』と、本件医薬品に配合されている、その原薬形態の『ナルフラフィン塩酸塩』の双方であると認めるのが相当である。したがって『ナルフラフィン塩酸塩』のみを本件医薬品の有効成分と解し『ナルフラフィン』は、本件医薬品の有効成分ではないと認定して、本件発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとはいえないと判断した本件審決の認定判断は誤りであり、取消事由1は理由がある」と述べている。

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