知財高裁(令和3年3月4日)“ボール配列用マスクの製造方法事件”は、「甲1発明に接した当業者において、本件発明に係る構造(サイト注:甲1発明との相違点に係る構成)を有するマスクを製造することについて動機付けがそもそもないのであるから、本件審決の甲1を主引用例とする進歩性の判断に誤りはないのであるが、なお念のため阻害要因の有無について検討する」、「甲1発明は、『ダミーパターンを形成することなしに、安定した厚みが得られるマスクを提供することを目的とするもの』であるところ、甲1発明において、凹部ではない領域及び凹部の縁部である領域とを併せた領域における一方の面を基準面として2次電着層12の厚さを超える部分を、上記相違点に係る構成である『互いに分離独立した複数の突起』とすれば、厚みを有して強度ないし耐久性を保つよう形成されるマスクを、従来技術であるダミーパターンを採用して構成されるマスクと同様に、2次電着層12のみの厚さからなる薄い箇所の面積を増やすことになり、マスクとしての耐久性が低下することは明らかであるから、その採用には阻害要因があるというべきである」、「原告は、分離独立した突起である方が、基板(ワーク)に対して追随性があり、枠状形状と比較して有利な点があるから、当業者は、耐久力の低下により、直ちに突起形成の採用を諦めるということはないと主張する。しかし、仮に、分離独立した突起である方が有利な点があるとしても、原告主張の突起形成を行うと、・・・・金属膜厚の薄い部分の増加による耐久性の低下という甲1発明の課題・・・・の解決に相反する結果が生じることは明らかである(突起の数を増やしたり、分離独立された『枠状』(突起)という構成(複数の突起により枠を形成するという趣旨と解される。)を採った場合でも、1個の枠状部分により凹部を形成する構成に比べれば、耐久性が低下することは明らかである。)。そうすると、甲1発明に対して、原告主張の突起形成を行うことには阻害要因があるというべきである」、「本件発明は、甲1発明及び甲2ないし8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであるということはできず、本件審決の判断に誤りはない」と述べている。 |