知財高裁(令和3年)“美容器事件控訴人は、美容ローラを購入する者及び美容ローラの製造販売業者は、美容ローラの購入又は販売に当たって、マイクロカレントの存在を非常に重視していると主張し、このような事実は損額算定に当たっての覆滅事由として考慮されなければならないと主張する・・・・。しかし、被控訴人は被告各製品と競合する美容ローラの製品を販売しているものと認められ・・・・、その基本的な構造、機能に照らして、被控訴人の製品の需要者は、被告各製品の需要者と重なるものと認められる。そして、仮に被告各製品が存在しないとした場合、被告各製品を購入した者が、マイクロカレントが存在することを理由に被控訴人の製品の購入をやめるとは考えられず、控訴人が主張するようにマイクロカレントの存在を有意義に感じている者が多いとすれば、むしろ被控訴人の製品を購入するものと認められるから、マイクロカレントの存否は、被告各製品に向けられていた需要が被控訴人の製品に向けられることを妨げるものではなく、損害額算定に当たっての覆滅事由として考慮することはできない。したがって、控訴人の上記主張を採用することはできない」、「また、控訴人は、マイクロカレントのない被告各製品について、安価で大量の商品を販売する流通業者に対する販路の開拓を行う等の営業努力によって販売個数を増加させてきた・・・・とし、このような事実は、本件における損額算定に当たっての覆滅事由として考慮されなければならないと主張する・・・・。しかし、安価で大量の商品を販売する流通業者に対する販路の開拓によって販売数を増加させることは、事業者が通常行う営業努力の範疇を超えるものではなく、本件において、控訴人が、どのようにして、事業者が通常行う範囲を超える格別の工夫や営業努力をしたかは明らかでなく、それを認めるに足りる証拠もないから、控訴人が行った営業努力をもって、損額算定に当たっての覆滅事由として考慮することはできない。したがって、控訴人の上記主張を採用することはできない」と述べている。

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