東京地裁(令和3年)“吹矢の矢事件相違点1について、被告は、乙1吹矢の『半円形』に代えて、先端部の形状を乙6公報、乙7公報及び乙9公報に開示された『楕円形』を採用することにより、本件発明の構成に容易に想到できると主張する。本件発明は、従来技術として、乙1吹矢と同じ吹矢である、先端部に丸釘が差し込まれた形状になっている吹矢が知られていたところ、矢を的から外すときにピンとフィルムを一体で引き抜くことができるなどの課題を解決するため、ピンの先端部が楕円形であり、的から外すときに釘の頭部に『かえし』がないなどの本件発明の構成を有するものである。乙1吹矢において、本件発明の上記課題等についての示唆があったと認めることはできない。被告は、乙1吹矢は、従前の吹矢の矢は矢の先が尖ったものだったところ、矢の先を丸くして当たっても大丈夫なように開発したもの・・・・であり、安全性を課題としていたことを挙げた上で、乙6公報、乙7公報及び乙9公報に開示された技術を適用することができると主張する。しかし、乙1吹矢の『半円形』の先端部・・・・は、矢の先が尖ったものではないから、安全性の課題は既に解決されている。したがって、乙1吹矢が安全性を課題としたものであったとしても、乙1吹矢に触れた当業者がその課題を更に解決するために乙6公報、乙7公報及び乙9公報の周知技術を組み合わせようとする動機付けはないといえる。当業者が、乙1吹矢の『半円形』に代えて、先端部の形状を乙6公報、乙7公報及び乙9公報に開示された『楕円形』を採用することで、本件発明の構成に容易に想到できるとは認められない」と述べている。

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